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注目の“音質向上コンポーネント”『Wind Bell』 - その効果を炭山アキラが多角度から徹底検証



炭山アキラ




http://www.phileweb.com/review/article/201402/26/1097.html



JBL「4338」:38cmウーファーが軽々と動き、生きいきと音楽を表現


高度なスプリングとショックアブソーバーを装備して不要振動をシャットアウトしながらフラフラ揺れることがなく、トップに取り付けられた「風鈴」が絶妙に音をチューニングするという、これまでにない考え方のインシュレーター「ウィンドベル」。今回はその実践編として、様々な大きさ・重さのスピーカー、そしてアナログプレーヤーと組み合わせて音を聴いてみよう。




まず登場願ったのはJBLの大型モニター「4338」だ。まずデフォルトで山本音響工芸のスプルース製インシュレーターを挿入して聴く。重厚で深みがあり、モニターらしく「自らの仕事を実直にこなす縁の下の力持ち」タイプでありながら音楽を落ち着いた気分で聴かせることに長けた、伝統のJBLモニター・サウンドが存分に楽しめる



ここで本機に「ウィンドベル」を挿入する。第一弾モデル「WB-30」は耐加重が4個で約30kg。「4338」は63.4kgあるから、1個当たり8個で支えてほぼぎりぎりということになる。ウッドブロックで支えていた時と同じ音量で同じソフトをかけると、ずいぶん音の表情が違って驚かされる。一番の違いは低域だ。JBLの38cmウーファーが軽々と動き、生きいきと躍動的に音楽を表現することになったのだ。



なぜこうも低域が変わってしまったのかというと、あくまで仮説ではあるが、この巨大な38cmウーファーが生み出す振動をウィンドベルが適切にマネージしているせいではないかと思うのだ。

床にベタ置きは論外だが、一般のハードタイプ・インシュレーターなどを床との間に挿入しても、これだけ大きなスピーカーでは振動が床に伝わり、また戻ってくることでスピーカーそのものの動作を阻害していると考えられる



ところが、ご存じの通りウィンドベルは非常に高品位なスプリングが内蔵され、言葉本来の意味の「インシュレーター」(遮蔽するもの)として、スピーカーと床の振動を切り離し、さらにがっちりとスピーカーを支えるという相矛盾するようなことをしっかりと両立しているのであろう。

一方、高域方向はウィンドベルの「風鈴効果」で一段とよく伸び、冴えざえと響き渡る。決して「余分な音」を付け加えているわけではなく、スピーカーの持つ素地をうまくすくい上げ、それを存分に開放してやっているという感じの音である


次は現代的トールボーイの代表としてモニターオーディオ「GX300」に登場を願った。まずデフォルトで聴くと、JBLに比べれば全体に柳腰だがそれでも結構な力感と伸びやかさを聴かせ、音像の立体感、音場の広大さは現代オーディオの精粋というべきものである。特に声の抑揚、歌手の性質を克明に表現することにかけては大したものだが、クラシックは少し細身になるかなという気がしないでもない。ちなみに「GX300」は27.2kgとウィンドベル4個でぴったりの重量である


ウィンドベルを挿入し、音楽を聴き始めた。一聴して低域が深々とローエンドまで伸び、量感が大きくアップしながら輪郭を緩めることなく、低域が軽く勢いよく弾け出してくる。


例によって高域方向は風鈴効果で音に明るさと冴えが増し、音の通りが良くなった感じだ。全体に生真面目な中へ巧まざるコクがあるという感じのモニターオーディオだが、出汁を取ってそのコク成分を大幅に増強したような聴き心地が実に楽しい。声は潤いを増し、デフォルトではある意味の魅力でもあった声質の克明さがほんの少し緩くなる代わりに長時間聴いても疲れない聴きやすさを獲得した。

JBLよりも「GX300」の方が音の違いが大きく出たが、これには理由がある。「GX300」のデフォルトはスパイクで支えていて、それをウィンドベルと交換したものだから、非常に大きなキャラクター差が出てしまったのだ。スパイクの良さとウィンドベルの持ち味を両立させることはできないか。幸いウィンドベルの天面には小さな窪みがついているからスパイクをここで受けることができる


置き直して音を出したらあっけに取られた。帯域バランスが完璧に整い、低域はよりスピードとパワーを増す。声は神経質さを排しながらさらに声質が克明になり、抑揚を細かく描き分ける。端正で高解像度でワイドレンジでパワフルで、あぁこれがGX300本来のサウンドだったのかと納得した。

なぜこうなったのか。スパイクというインシュレーターはご存じの通り上物の不要振動を床面へ効率的に逃がす効果を持つ。スピーカーの多くがスパイクを標準装備しているのはスピーカーそのものが振動の巣というべきものだからだ。ところが、スパイクはそういう効果を持つだけに下面、すなわち受けの材質や形状に大きな影響を受ける。ウィンドベルは高度なスプリングとショックアブソーバーで振動を遮断してしまうから、上の"風鈴"までで振動が治められてしまうのだ。

一方、風鈴へは非常に効率よく振動が届くので高域はより伸びやかになると考えられる。ひょっとしてウィンドベル、「スパイク受け」として理想の構造なのではないかと思えてきた。

次はいわゆる小型2ウェイの代表として、エラックの「BS243BE」に登場願う。スタンドは定評あるタオック製のものを使う。


比較対象用に聴いておいたウッドブロックをウィンドベルに交換すると、ここでも低域が伸びやかさを増し、高域方向が明るく飛び散るようになる効果は確認できた。声は一段とみずみずしく、そしてどこか若々しいイメージとなった。サ行はもともと少々強めの録音なのだが、それがより大きく張り出す感じだというのに耳につかないのは不思議なものである。

ただし、より大型の2モデルに比べてウィンドベルそのものの効きが小さくも感じる。これは最大重量30kg(4個使いの場合)のウィンドベルに対して、「BS243BE」が5.7kgとかなり軽めなことが原因ではないかと推測される。

そこで、試験的にTGメタルの鉛円盤をスピーカーの上へ置いてみた。たった1kg弱の重量増加でしかないが、それでも低域方向の伸びは確実に改善されたから、これはやはり効果ありと断じてよいだろう。


また、ウィンドベル1個あたりにかかる最大重量を上げるためには3点支持にすればいいではないかと思いつき、早速実験にかかる。前2点、後ろ1点の支持に替えて音を聴くと、おぉ、低域が大きく改善されている!


高域方向は数が減って風鈴効果が減ずるかと思いきや、それほど変わったようには聴こえない。軽量級のスピーカーを支えるなら、これは大いに薦められる方式といってよいだろう。



高度なスプリングとショックアブソーバーで完璧に振動を遮断するウィンドベルはアナログにも完璧に対応してくれる。そこで、ここではラックスマンの「PD-171」とラックの間に挿入して音を聴いてみることとした



レコード1枚目の冒頭で弱音部のS/N感が劇的に向上していて舌を巻いた。弦の涼やかに伸びる感じ、音場のビロードをなでるような質感が何とも素晴らしい。S/Nの向上は明らかにインシュレーション効果の賜であろうが、弦の伸びと質感の向上は風鈴の効果ではないかと推察する。



ここでちょっとイタズラ心が起き、実験してみることとした。手持ちのレコードには高域方向が寂しく、今ひとつすっきりと楽しめないものが何枚もある。それらを風鈴効果で気持ち良く聴くことができないかと考えた次第だ。

まず、ナット・キング・コールの古いLPから「モナリザ」をかける。この盤はかなりコンディションの悪い中古盤で、寄る年波からか高域特性が落ちてしまっているのはもとより、声がジャリジャリとしてどうにももどかしかった。それが、ウィンドベル装備のプレーヤーでは一気にあの艶やかな声を彷彿させる鳴り方に変わったではないか!

察するに、声の帯域の豊かな倍音成分を風鈴が見事に整えてくれたのであろう。これなら十分以上に楽しむことが可能だ。

次に渡辺香津美「トチカ」を聴く。これはわが家にある数年前に発売された復刻盤では高域までしゃっきりと伸びているのに、たまたま手元にあった往年の通常盤はどうにもハイ落ちで詰まったような音なのだ。

というわけで、ウィンドベル装備のプレーヤーでそのハイ落ち通常盤をかけてみる。そうしたら、さすがの風鈴もここまでのハイ落ちは補整できないようだった。というより、本質的に伸びた音を美しく整える効果はあっても、そもそも出ていない音を付け加えるということはないのであろう。風鈴効果が「余分な音を出す」装置ではなく、「本来の素性をより磨き上げる」ものであることが確認できて、個人的にも非常に有意義な実験だった。皆さんにもぜひ追試してもらいたい項目である。



それにしても、効果があるだろうとは予測していたが、ここまでとは思わなかった。ウィンドベルが最も効果的なのはアナログではないかと思わせるほどだった。しかも副作用らしきものが聴こえてこないのは不思議なほどである。アナログのインシュレーションが十分でないと感じている人はもちろん、大きな不満を感じていない人もぜひ一度試してみてほしい。