「自分よりハイスペックな男」を探す婚活はやめたほうがいい/ジェーン・スー×中野信子
8/30(金) 8:47配信
対談本『女に生まれてモヤってる!』(小学館)を上梓したコラムニストのジェーン・スーさんと脳科学者の中野信子さん。
「女らしさ」に絡め取られ、自分らしくいられないなら撤収してよし! と、背中を押してもらった前回に続いて、今回は人生相談。女性と結婚にまつわるよくある「モヤり」から脱出する術をおふたりからアドバイスいただきました!
アラフォー婚活難民からの相談
Case1<「結婚しなきゃ」と婚活を続けていますがうまくいかず、年ばかりとっていきます。ますます自信を失いながらも、相手に対するスペックを下げられずに、八方ふさがりです。(アラフォー婚活難民の女性)>
中野:40代ぐらいで経済的な基盤がしっかりしている女性だったら、スペックで男の人を選ぶというパラダイムが崩れちゃうと思うんです。結婚というスタイルに合わないライフスタイルを選択してしまった、ってことなのでは(パラダイム:ものの考え方や認識の枠組み)。
スー:自分に収入があっても、自分より稼いでいるとか「上方婚」(年収やステータスなどが自分より上の相手との結婚)を目指す女性っているけど、本当にそれ必要なの? なんで? と尋ねたい。
中野:収入が高くて安定しているなら、自分より収入が高い人と結婚する必要ってあります? シンプルに考えて、ないですよね。
スー:自分で稼いで暮らしてきた女性であれば、いろんな不具合や不都合を多少はお金で解決してきているはず。便利をお金で買う、自分のお金を好きなように使うということですよね。だけど自分より収入の良い人と結婚したら、そうはいかなくなる場合もあると思うんだけど。
中野:イニシアチブを取られるっていうのは……
スー:いま、それを遠回りで言っていたのに。
中野:ぁああ。
スー:「イニシアチブを取られる」とか言うと、わがままに見えるんだよ。「女」という役割を担っていると!
中野:(笑)。「自分の人生を自分で決めてきたという自負のある女性にとっては」。
スー:それだ! きれいにまとまってきたぞ!
旅行や、おいしいご飯は友達と行けばいい
中野:他者がそこに介入してくる機会を与えるということでもあるわけで。そこまでして結婚はする価値のあるものなのか? という疑念が湧いてしまいます。
スー:本質的には収入の多寡(たか)ではなく、あなた自身がイニシアチブを取りたい人なのか、相手はどうなのかの問題だよね。自分の理想ほどは稼げていないからこそ、男の沽券(こけん)としてイニシアチブをとりたがる人というのもヤバいので。
中野:それは……!?
スー:いないとは言えない。それは気をつかわなきゃいけないから大変だ。そこそこの年齢になって婚活に悩んでいるのなら、どういう相手と一緒にいるのが一番居心地がいいのか真剣に考えたほうがいいと思う。私にとって大切なのは、私の人生を邪魔しない人。なんでもかんでも合わせてくれるってことじゃなくて。合わせて欲しいと思うこともあったけど、どうしても合わないなら、旅行でも外食でも友達を誘えばいいんだと悟ったわ。
中野:本当にそれ! それな!!
スー:私たちの世代、JRのフルムーンCMの刷り込みがすごいのよ、たぶん(フルムーンのCM=長年添い遂げた夫婦が、老後に旅行に行きましょうというもの)。
年をとったら、夫婦でいい旅行にって。それが正解だって。
中野:どんだけの時間、我慢してきたの? って思うよね。もし、幼い頃から「お嫁にいけなくなるわよ」という脅しを受け、結婚という呪いにかかり、「しなきゃいけない」と思っているのであれば、そんなものもう捨ててもいいと思います。
「誰かを見返したい」という気持ちは捨てて
スー:居心地の良い相手と一緒にいたほうが気持ちが落ち着くから、寄り添うように暮らしていきたい。だから結婚したいっていうんだったらいいと思うんだけど……。
中野:素敵だよね。
スー:そこそこ稼いでいて、社会的経験値も積んできたのに、「自分より年収やステータスが上の男性じゃなきゃ」とか、道場破りじゃないんだからさ。「たのもー」って言っても、誰も出てこないと思うよ。
中野:まさに、道場破りだよね。何と戦ってるの!!
スー:「この看板はもらった!」みたいなの目指してるわけじゃないだろうに。
どこの道場も相手にしてくれないと嘆くんじゃなくて、少し落ち着いて、自分で道場でもお教室でも開けばいい。だってもう、誰かに習う必要ないんだもの。
中野:もしかしたら、「誰かを見返したい」みたいな気持ちがあって結婚したいのかもしれないんだよね。でも、それはそれで、見返す材料のために誰か人の人生を使うっていう発想がちょっとズレていると思うんですね。結婚って相手がいて、その人の意思も自分の意思と同等に尊重されるべきものだから。
スー:反省します。私も「顔のない世間みたいなものを見返さなきゃ!」って思いが30代半ばまではあったから。だけど、いま思うと本当に品がなかった。人の人生をなんだと思っていたんだと。当時の相手に菓子折りを持って謝りに行きたい感じではあります。
上なのは年齢だけ。それでも楽しい
中野:もしも見返したいのであれば、もっとコストパフォーマンスがいい、一人で十分やりこなせる方法が必ずあるので、それを考えたほうがずっといいでしょう。
スー:いまのパートナーとは、結構ケンカもするんです。でも、絶対に仲直りしようという前提あってのケンカ。それまではずっと、「ケンカをしないのがお似合いのふたり、いつでも穏やかなのがいちばん」って、思いこんでいたんですけど。
中野:スーさんのところ、楽しそうだものね。
スー:楽しいよ。うちは家事が彼担当で給料制なんですけど、彼は家事をゲーム的にとらえていて、やりくりに命をかけてるんですね。グラム100円以上の豚肉は買わないぜ! みたいな。
中野:そういうライフハックなんだね。
スー:「頼むから、もう少しいい肉を食わせてくれ」と思う時も正直ある(笑)。だけど、おおむね楽しい。上方婚を目指す女性にしてみたら、こうした状態を「幸せ」だとは思わないでしょうし、彼女たちの基準では、私は「負け組」でしょう。
一緒にいて楽しい人は、意外なところにいるかもしれない
中野:うちもですね。夫の「私学の准教授」という立場をどう捉えるかによりますけど、収入は私のほうが高くなってしまう。結婚したときは彼は非常勤講師でかなり経済的には苦しかったですし、上方婚ともし仮にいうのであれば、確実に上だといえるのは年齢だけですね。
スー:一緒にいて楽しい人って、自分が思い込んでいる理想とは全然、違うこともあるんだよね。だから、自分にいちばん必要なものは何かは、いろんな人とつきあって考えるという手もある。マッチングアプリで片っ端からいろんなジャンルの人とデートしてみるとか。
中野:面が割れてなかったら、私も婚活して、片っ端からデートして観察してみたい(笑)。
スー:割れてるよ。「ホンマでっか?」って言われるよ。
中野:言われるわー(笑)。「ホンマでっか、また来てるよ」って言われるわー。
スー:私はホント、想像していたのとはまったく違うタイプで、「こんなところにジャックポットが!」って感じでした。
中野:うちは、ほのぼのしてるなあ。全然、ケンカがなくて。私が「洗濯物をなんで洗濯機の中にいれたまま、一晩放置するの!」って怒ると、「もう一回洗うね」って言ってくれるような。どんなに私がキレても穏やかにいなしちゃう。男の人はキレるものだと思っていたので新しい経験でしたし、彼の性格のおかげで守られていますね。気持ちが楽ですね。
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次回、女性と結婚にまつわるよくある「モヤり」相談の続きは、近日公開です。
【ジェーン・スー】
1973年、東京生まれ。作詞家・コラムニスト・ラジオパーソナリティ(TBSラジオ『ジェーン・スー 生活は踊る』など)。著書に第31回講談社エッセイ賞を受賞の『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』(幻冬舎文庫)や、『私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな』(ポプラ文庫)、『私がオバさんになったよ』(幻冬舎)など多数。
【中野信子】
1975年、東京生まれ。脳科学者・医学博士・認知科学者。東京大学工学部を卒業後、東京大学大学院医学系博士課程を修了。2008年からフランス国立研究所に博士研究員として2年間勤務した後、帰国。現在は、東日本国際大学教授。著書に『脳内麻薬』(幻冬舎新書)『サイコパス』(文春新書)、『キレる!』(小学館新書)など。また、テレビコメンテーターとしても活躍中。
<文/鈴木靖子、写真/渡辺秀之>
女子SPA!
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