定年後に軽井沢に移住し、愛犬と楽しく暮らす家
セカンドライフを満喫するために、首都圏から移住予定の夫妻が軽井沢に建てた自然派住宅。愛犬と過ごす空間には笑顔があふれていました
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埼玉県在住の吉村彰広さんご夫妻が、定年後に軽井沢へ完全移住し、セカンドライフを満喫するために建てた家である。一見、和風モダンな平屋だが、内部は大開口のあるLDKを中心に、鉄道ファンの吉村さん念願の「鉄道趣味スペース」のあるロフトや、熟睡できる半地下の寝室など、3層の居住空間で構成されている。L字型の建物に囲まれた広い庭では、愛犬きなこちゃんが自由に走りまわる。そんな家族全員の笑顔が絶えない吉村邸を訪れた。

鎌田建築設計室
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どんなHouzz?
所在地:北佐久郡軽井沢
家族構成:60歳代ご夫妻+愛犬きなこちゃん
構造・規模:木造2階建て
敷地面積:416.16㎡
延床面積:98.25㎡
設計:鎌田建築設計室の鎌田賢太郎さん
施工:アシストNAKAJIMA
竣工:2017年6月
第14回 長野県建築文化賞 優秀賞作品
軽井沢は、吉村夫妻の出会いの地でもある。定年後に「高原地域で、適度に文化的刺激もあり、駅・スーパー・病院・役場などが徒歩圏内にある場所に住みたい」と、50歳を過ぎた頃から、思い出の地を中心に土地を探し始め、しなの鉄道の中軽井沢駅からほど近い分譲地を見つけたという。
移住に踏み切る決定打は、「四季の移ろいを感じて暮らせる」という佐久市で設計事務所を経営していた出澤潔所長の一言。吉村夫妻は出澤所長と、先住犬の英国ゴールデンレトリバーを介して知り合った。
家の設計は、出澤潔建築設計事務所から独立し、地元で活躍している若き建築家・鎌田賢太郎さんに任せた。決め手は、佐久市内で鎌田さんが手がけた和モダンな家。外観が気に入り「このイメージで」と依頼した。

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玄関から一歩足を踏み入れると、庭が180度、見渡せる開放的なスペースが目に飛び込んでくる。床はパイン材、天井はシナ合板、壁は珪藻土でつくられた建物は、自然の中の自然派住宅である。
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吉村邸は「南向き=日当たり良好」という既成概念を打ち破った、西向きの家だ。南側に隣家が建っているため消去法だったとはいえ、「西向きの家は、軽井沢のような寒冷地では、強い西日を取り込んで、部屋を暖められるのがメリット」だと鎌田さんは語る。
「夏は草木が繁り、実は南向きの窓よりも、陽光に輝く緑が鮮やかに見え、美しい夕陽も見られる」のも利点だという。吉村さんも「西向きの家は、フィンランドやノルウェーなど北欧でも、暖かさと静寂な夕刻を生活に取り込むために好まれている」ので大歓迎だと語る。

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眺めの良いダイニングキッチン
吉村邸には、夫妻と同年齢のカップルが良く遊びに来る。奥様同士はキッチンで料理をつくりながらお喋りをし、旦那様たちは、ダイニングテーブルでお酒を片手に会話が弾むという。庭には野鳥もやってくるので、双眼鏡と野鳥図鑑が手放せない。
ウッドデッキ脇の壁と、その前に植栽したシャラノキは、鎌田さんいわく「ダイニングエリアから南側の隣家が視界に入ってこないように」綿密に計画されたものだ。「ここからの眺めは格別です」と奥様も喜んでいる。
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東側の高窓と西側の開口で、採光と換気もしっかり取れる。上向きの間接照明と、下向きのダウンライトを組み合わせた灯りの演出も効果的だ。竹細工のペンダントライト・Hokore(ほこれ)は、天井をすっきり見せるために、配線器具を天井の中に隠して吊している。

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エアコンも180度開閉できる格子で目隠しした。一番右側の格子の奥には、神棚を置く予定だ。
玄関ホールとリビングの間は、組子の両面に障子紙を張った引き戸で仕切ることもできる。「冬はこの太鼓張りの障子が、寒さをしっかりブロックしてくれます」(吉村さん)。ただし、障子を愛犬きなこちゃんが引っ掻いてしまうのは、計算外だったそう。破れた後を、奥様が桜の花びらをあしらった和紙できれいに補修し、それが洒落たアクセントになっている。

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スキップフロアを駆使し、ギリギリまで無駄をなくした吉村邸。建物の機能美や堅牢さが緻密に計算されている。メインのリビングから、絶妙の距離で半地上階と半地下階がつながっており、想像以上の空間の広がりと収納スペースが確保できている。
また吉村邸の屋内の扉は、全て引き戸である。「設計上かなり厳しい中、我々の希望を叶えて頂き、とても感謝しています」(吉村夫妻)

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凍結深度*の確保で生まれた床下ピット空間を利用した半地下の寝室
寒冷地の軽井沢では、冬期に地面が凍結し、体積の膨みで地盤が盛り上がり、その力が建物を押し上げてしまう。そのため、地盤と接する最深部を、凍結深度(70cm)より深く掘削する必要がある。「この地下空間をどうにか有効利用できないか?」と常日頃考えていたという鎌田さん。建築基準法に定められた最低の天井高2.1mを確保して、半地下寝室をつくりだした。
「塒(ねぐら)で包まれているような安心感があって、熟睡できます」と吉村さん。スキップフロアの階段も、「たった4段なので、老後も安心」だという。埼玉の自宅にも地下室はあるが、「寝室は半地下がベスト」という。南側の窓から心地よい日が差し込み、日中でも閉塞感はない。

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中学2年生の頃から鉄道ファンの吉村さんが「あえて飾らず、倉庫のイメージで」と要望したロフトの鉄道趣味スペース。「座った状態でレイアウト全体が見渡せるように」と腰高のカウンターを設置してもらった。このカウンターは、狭い空間を取り囲むように配されており、現在製作中の、鉄道模型を走らせる日が待ち遠しいという。北側の小窓からは浅間山ものぞめる。
ロフトの反対側は、娘さんや友達が訪れた時の宿泊スペース。屋根の傾斜下のデッドスペースを収納として活用し、ぴったりサイズの台車も作成したので、布団の取り出しが簡単にできる。
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軸がきれいに通っているLDK
キッチン側から見ると、玄関扉が部屋中央の大黒柱の延長線上に整然と立っているのがわかる美しい室内。キッチン背面の裏側には、食材から庭道具まで収納できるパントリー・スペースもある。夫妻は、庭掃除をする時には、リビングからではなく、パントリー奥の勝手口を利用しているという。

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