「年金手取り額が少ない」都道府県庁所在地ランキング、住む場所でこんなに違った!

7/11(木) 6:01配信

ダイヤモンド・オンライン

「年金手取り額が少ない」都道府県庁所在地ランキング、住む場所でこんなに違った!

「住むところによって、年金の手取り額が異なる」という衝撃の事実を、皆さんはご存じでしょうか? Photo:PIXTA

● 住む場所で年金手取り額が 異なる要因は住民税?それとも…

 「老後資金2000万円問題」は、当初騒がれた「老後資金は本当に2000万円必要なのか」という話題から、現在は「年金制度問題」へ変化している。どのメディアでも「年金特集」を組むと、よく読まれると聞く。参議院選挙の争点でもあるので、しばらくこの状態は続くことだろう。

【47自治体のランキング表はこちら】

 当連載コラムの前回でも「年金」をテーマとして取り上げた。「『老後2000万円』より深刻!年金手取り額が減り続けている衝撃実態」と題して、年金収入300万円の手取り額は、1999年と今年を比較すると20年間でなんと36万円も減っていることをお伝えした。

 額面の年金収入の手取りが減るとは、税金と社会保険料の負担が増えたということ。20年間で額面の1割以上も手取り額が減っているのだから、「なんだか生活が苦しくなったな」と感じている人は多い。しかし毎年、年金の手取り額をノートにつけて経年変化をチェックしていない限り、具体的な要因にたどり着くことはできないのである。

 さて、今回は「住むところによって、年金の手取り額が異なる」という衝撃の事実をお伝えしよう。

 セミナーで参加者に「住むところで年金の手取り額が異なる要因は何でしょうか」と質問すると、ほとんどの人が「自治体によって住民税が違うからでしょ」と答える。

 住民税は不正解。住民税は、全国どこに住んでいても原則として同じ(均等割の非課税要件など細かい部分で違いはあるが、所得にかかる部分は全国同じ税率である)。

 正解は、社会保険料、つまり国民健康保険料と介護保険料の違いだ。自治体により保険料の計算式や料率が異なるため、「住む場所」により保険料に格差が発生する。

 私のこの持ちネタに関心を持った光文社女性自身」編集部が、「全国都道府県庁所在地」ごとの手取り額をランキングしてみようと持ちかけてきた。編集部が47都道府県庁所在地の自治体に社会保険料計算を依頼し、それをもとに私が税額を計算し手取り額を算出。2019年7月9日号に掲載されたのだが、読者から大きな反響があったようだ。

 せっかくなのでダイヤモンド・オンラインの読者にも紹介したい。そこで「女性自身」編集部のご協力を得て、当コラムでもランキングを掲載することが実現した。

 試算条件は、60代後半の年金生活者で公的年金と企業年金の合計額は265万円、妻は基礎年金のみ。夫の手取り額を試算し、「少ない順番」でランキングしている。まずは、結果をご覧いただきたい。

 

 

 

● ワースト1位は都構想で話題のあの市

 手取り額ワースト1位は、大阪市。予想通りの結果となった。23年前にFPになった頃から「大阪市は財政状況がよくないから、国民健康保険料が高い」と聞いていた。県庁所在地の自治体以外で大阪市の保険料を超えるところもあるかもしれないが、47自治体の中ではワースト1位となってしまった。

 ランキングをみて、税金の額に差があることに疑問を持つ人もいるだろう。手取り額を計算する過程で社会保険料は控除の対象となるため、社会保険料が高くなると、税金は多少安くなるのである。

● 手取りを左右するのは 国民健康保険料!

 手取り額を左右するのは社会保険料だが、どちらかというと介護保険料よりも国民健康保険料のほうが格差は大きい。例えば、47自治体の中で最も国民健康保険料が高いのはワースト3位の松江市で、年23万9730円。最も安いのは手取り額が一番多い結果となった静岡市で、年16万1600円。その差は、約年7万8000円。同じ年金収入なのに大きな違いだ。

 国民健康保険料は、加入者のうち医療費を多く使う高齢者の割合が多かったり、税収が少なく財政状況が悪かったりすると、高くなる傾向がある。

 そこで「お金がありそうな自治体」も手取り試算してみた。

 愛知県豊田市の手取り額は、233万7800円。前出の47都道府県庁ランキングに当てはめると、手取り額の多さで静岡市を抜く。さすが、日本一の企業城下町だ。

 豊田市はトヨタ自動車や関連企業が多く、法人税の税収が多い。市として財政が潤っているのだろう。

 次に北海道猿払(さるふつ)村。北海道最北端の宗谷岬をオホーツク海沿いに少し南下したところにあり、ホタテの漁獲量が日本一だ。

 数年前に「猿払村はホタテ漁の漁師が高所得で国民健康保険料が日本一安い(当時)」という新聞記事を読んだことがあり、気になっていたので今回試算してみた。手取り額は豊田市よりも多く、国民健康保険料は12万3100円。保険料が高い松江市の半額程度である。

 漁師は自営業者なので、現役時代から国民健康保険に加入する。若く、健康で(医療費を使わない)、高所得の漁師が保険料収入の多くを負担してくれるため、全体として保険料率が低くなる。猿払村に住む高齢者はラッキーだ(もちろん、現役漁師のときは多くの保険料を負担したことだろう)。

 ふるさと納税で寄付金を多く集めている大阪府泉佐野市も気になった。試算してみると、ワーストランキング5位と6位の間となる。財政の厳しさが、ふるさと納税強化につながったのか…。これについては分析できない。

 年金の手取り額の多寡だけでリタイア後の住まいを決めることはできないが、自治体によって国民健康保険料や介護保険料が異なることは知っておきたい。

 年金生活に入ったら、自分の年金にかかる

 

所得税・住民税、国民健康保険料・社会保険料を

 

把握して、手取り額を計算すること

 

をお勧めする。長いリタイア後の生活を送る自分の町の財政を間接的に知ることにつながるからだ。

 

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190711-00208380-diamond-soci&p=2

 (株式会社生活設計塾クルー ファイナンシャルプランナー深田晶恵)

深田晶恵