「ギターで使われる木材事典」です。

 

https://info.shimamura.co.jp/guitar/feature/guitar-wood-materials-encyclopedia-1/

 

木材事典①

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さっそく行きましょう。全部で何回になるかはまだ未知数ですが、とりあえずスタートしちゃいます。五十音順に「あ」から始めていきます。最終回にはまとめようと思いますが、それまでじっくりお付き合い下さい♪
ちなみに、木材データの「強度」は6段階で表しています。一番やわらかいのが1で6に行くに従って強度を増します。

第一回目の今回は「あ行」の木材を取り上げます。
※一般的な木材を取り上げています。今回取り上げた以外でも「これは!」という物がありましたら、このシリーズの最後に追加で記載していきます♪

■アガチス ~Agathis~

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一見広葉樹の様に年輪が定かではない木目を持った針葉樹。木目だけを見るとマホガニーの仲間に思えますが、あえて例えるならアルダーに近い材。しかしアルダーよりも柔らかく、保存性は低い為にギター・ベースで使用される事は稀。しかしながらコスト面も抑えられるため、低価格のギターなどに使われることもあります。

比較的抜けてくる音質ではありますが、強度としては柔らかめなので、音のコシに欠ける部分は否めません。楽器として体を成すレベルではあるので、低価格でギター&ベースを製作、初心者の方々が楽器を購入しやすいという意味では、非常に優れた材とも言えます。ボディ材として使用されます。

ナンヨウスギ
アガチス
種類 常緑針葉樹
別名 アルマシガ/ダマルミニャク
産地 東南アジア
気乾比重 0.52
強度 2

~アガチスを使用したギター・ベース~

島村楽器オリジナルモデルとして、かつて製作されていたLumber LDG-10のバック&サイドはアガチス材でした。

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木材画像提供:府中家具工業協同組合様「木材図鑑」

■アッシュ(ホワイト・アッシュ) ~Ash/White Ash~

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主に辺材がこの様に白っぽいためホワイト・アッシュと呼ばれ、ギター・ベースで使用されます。(心材は色味が強いためブラウン・アッシュと呼ばれ、家具等で使用されます)

木目がしっかり出ることが多く、エキゾチックな雰囲気を漂わせます。また、アメリカ合衆国北部~カナダが産地であることから「ノーザンアッシュ」(Northern Ash)と呼ばれる事も。

重量は重く、非常に硬い材であるため、低域、高域がしっかり出てくる特性を持ちます。そのためベースや多弦ギターなど、低音を重視しながらも明瞭なサウンドを目指した楽器に使用されます。ボディ材として使用されます。

※ライト・アッシュ、ライトウェイト・アッシュに関しては次のスワンプ・アッシュの項で言及します。

モクセイ
トネリコ
種類 広葉樹
別名 ノーザンアッシュ/アメリカタモ/アメリカトネリコ
産地 北米北部~カナダ
気乾比重 0.69
強度 5

~ホワイト・アッシュを使用したギター・ベース~

木材画像提供:府中家具工業協同組合様「木材図鑑」

■アッシュ(スワンプ・アッシュ) ~Ash/Swamp Ash~

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先述のホワイト・アッシュと根本的な違いはないものの、産地と比重において相違なものです。ホワイト・アッシュに比べて少し黄色がかった色をしているために、パンプキン・アッシュとも呼ばれます(本来の樹種名はパンプキン・アッシュと言うのですが、ギター界ではスワンプ・アッシュの方が有名な名前になってます)。 ホワイト・アッシュ同様アメリカ産ですが、南東部で採れるのがスワンプ・アッシュ。
木目はホワイト・アッシュよりもおとなしく、50年代のFenderギターによく使用されたのが楽器流通の始まりです。

高域特性に優れている点はアッシュの特徴ですが、ホワイト・アッシュに比べて低域が弱く、逆に中域にピークがあります。サウンドのイメージはやはりストラトやテレキャスといったギターが代表格。(アッシュボディのもの) ボディ材として使用されます。

モクセイ
トネリコ
種類 広葉樹
別名 ライトアッシュ/アオダモ/ビロードトネリコ
産地 北米南東部
気乾比重 0.54
強度 4

~スワンプ・アッシュを使用したギター・ベース~

木材画像提供:(株)ディバイザー様

※ライト・アッシュ、ライトウェイト・アッシュ

ライト・アッシュというものは、単に「軽いアッシュ材」という通称名。ホワイトであってもスワンプであっても軽ければ「ライト・アッシュ」なのです。

■アッシュ(ジャパニーズ・アッシュ) ~Ash/Japanese Ash/セン

sen
アッシュの仲間である栓(セン)。それ故にジャパニーズ・アッシュという名でも流通している木材です。アメリカからの輸入と違い産地が国内であること、また成長速度が速いということから、比較的安価に入手できます。そのため安価なギターの材料として使用される事もあります。

センは「アッシュの仲間」ではなく「アッシュの仲間とよく言われる」が正しい表現です。実際、アッシュはモクセイ科トネリコ属性、センはウコギ科ハリギリ属の樹のため全くの別物です。
※訂正2016年6月22日追記

またホワイト・アッシュ、スワンプ・アッシュほどの強度はないため、音の明瞭度は少々落ちます。中域が強調され、高域と低域はすこしボヤけたような特性になりがちです。ボディ材として使用されます。

ウコギ
ハリギリ
種類 広葉樹
別名 栓/セン/タランボセン/カスターアラリア/トネリコ
産地 日本、東アジア
気乾比重 0.5
強度 3

~ジャパニーズ・アッシュを使用したギター・ベース~

現在はあまりジャパニーズ・アッシュのギターは生産されていないようですね。そんな中FERNANDESの海外仕様モデルが島村楽器に入荷したこともありました。

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木材画像提供:府中家具工業協同組合様「木材図鑑」

■アルダー ~Alder~

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メイプル、ローズウッド、マホガニー等と並ぶ、ギター・ベース、特にエレキギター&エレキベースで頻繁に使用される木材です。特に使用されるのは「レッドアルダー」と呼ばれる、アメリカ&カナダの太平洋海岸に生息するもの。(他にも日本、ヨーロッパ、ロシアを産地としたアルダーも存在します)

強度は3で、比較的柔らかく加工しやすいのが特徴。しかし乾燥までの時間も短く、より早く材が安定するため、ギター・ベースの材として適しています。

Fenderのストラト、テレキャス、ジャズベ、プレベといえばアルダー材を使用した物が多く、Fender系の楽器の代名詞にもなっています。サウンド傾向もアッシュのそれとは違い、高域成分が少々抑えられて、中~低域にピークのある安定したサウンドになりやすいので、Fenderにとどまらず非常に多くの楽器で使用される材です。ボディ材として使用されます。

カバノキ
ハンノキ
種類 広葉樹
別名 レッドアルダー/ウエスタンアルダー
産地 北米、カナダ
気乾比重 0.4~0.5
強度 3

~アルダーを使用したギター・ベース~

木材画像提供:フジゲン(株)様

■ウェンジ(ウェンゲ) ~Wenge~

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非常に硬い木材。アフリカ中部に生息するものをウェンジと呼び、東南アジア産のものはタガヤサンと呼ばれます。比重も大きく、比較的重くなってしまうため、強度を上げたり指板材としてサウンドの特性を決めたりといった使用方法が主流。Warwickにはウェンジ製のネックも存在します。

硬度が高いので、音質も非常に明瞭になる傾向があります。ローズウッドとエボニーの中間に位置するようなイメージです。

マメ
ミレシア
種類 広葉樹
別名 ジゲラ/タガヤサン(アジア産)
産地 中央アフリカ
気乾比重 0.79~0.88
強度 6

~ウェンジを使用したギター・ベース~

木材画像提供:フジゲン(株)様

■ウォルナット ~Walnut~

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一般的に楽器業界で使用されているのはブラック・ウォルナットという種。別名アメリカン・ウォルナットというだけあって、基本的にはアメリカの中央部が産地。その他のヨーロピアン・ウォルナット、カナディアン・ウォルナット等はそれぞれの国で採ることが出来ます。

世界的に銘木と称されるウォルナットですが、乾燥後の狂いも少ない事、また割れにくく硬質なため、立ち上がりの早い音の傾向があります。

ギター・ベースのネックをメイプルと組み合わせて3ピース、5ピース、7ピースにする際に使用されることが多くあります。ベースではスルーネックの強度補強のために使われたり、ボディ材として使われたりと、幅広く使われています。またアコギのバックとサイドの材としても使用されます。非常に使用用途の広い材と言えます。

クルミ
クルミ
種類 広葉樹
別名 ブラック・ウォルナット/アメリカン・ウォルナット
産地 アメリカ中央部(東部・カナダ)
気乾比重 0.64
強度 5

~ウォルナットを使用したギター・ベース~

木材画像提供:(株)ディバイザー様

■エボニー ~Ebony/黒檀~

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直径が18cmに成長するまでに200年かかると言われる希少な樹木であり、さらにエボニーと言えばイメージする漆黒の部位は心材のみ。辺材は白いため漆黒のエボニーは希少で、高価になります。真っ黒のエボニーを「本黒檀」とも呼びます。

音響特性はその硬度が物語るとおり、立ち上がりの良いタイトなサウンド。アタックが明瞭になります。

ギター・ベース全般の指板として使用される事がほとんどです。
また元々希少な材である上に、現在は採取も難しくなってきていることから、リッチライト(いずれ触れます)という人工エボニー材もギターの指板に採用され始めています。

カキノキ
カキノキ
種類 広葉樹
別名 エボナイト/黒木/黒檀
産地 インド~東南アジア

 

 

 

 

 

 

 

 

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ギターに使う「黒檀」の森が消える、アフリカで進む再生事業

7/7(日) 8:11配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

ギターに使う「黒檀」の森が消える、アフリカで進む再生事業

カメルーン南西部コンゴ盆地の森で、黒檀の苗木を植えるノエル・ナケレ・ドボ・ンコウリさん。「これらの木は私たちの遺産です」(PHOTOGRAPH BY TIM MCDONNELL)

アフリカで深刻になる森林伐採、米ギターメーカーが再生支援

 アフリカ、カメルーン南西部にあるコンピア村の熱帯雨林。ノエル・ナケレ・ドボ・ンコウリさんがなたを振り回し、生い茂るつるを切って道を開いていく。ンコウリさんは数メートルごとに立ち止まると、赤土に穴を開けて黒檀(コクタン、エボニー)の苗木を植え付ける。黒檀は、彫刻やピアノの鍵盤、家具のアクセント、弦楽器の指板(ネックの表面に張った板)として珍重されている漆黒の木材だ。

ギャラリー:世界のすごい木 そのストーリー 写真9点

 ンコウリさんをはじめ、一帯の村人たちは2018年から、5000本以上の黒檀を植樹している。木材として利用できる大きさに育つまでには100年かかるが、ンコウリさんは未来の世代のための投資と考えている。カメルーンのあるアフリカ中部では、農業や樹木の伐採が原因で、森林が急激に失われている。

 ンコウリさんらの森林再生プロジェクトは、意外なパトロンの支援を受けている。そのパトロンとは、ミュージシャンのテイラー・スウィフトジェイソン・ムラーズを顧客に持ち、アフリカの黒檀を大量に消費している米国のギターメーカーだ。

 テイラー・ギターズは毎年16万本のギターを製造するメーカーで、すべてのギターの指板とブリッジにカメルーンの黒檀を使用している。そのテイラー・ギターズが、カメルーン内外の生態学者と提携し、2020年までに最大2万本の黒檀を植樹する手助けを行っているのだ。

 プロジェクトの目的は、持続可能な木材調達に関するギター業界の意識の低さを改めること。2012年、ギターのトップメーカー、ギブソン・ギターは、マダガスカルとインドから黒檀と紫檀(シタン、ローズウッド)を違法に輸入したとして、米魚類野生生物局から60万ドル(約6500万円)超の罰金を科されている。今回のプロジェクトはカメルーンを代表する自然資源でありながら、大きな脅威にさらされている黒檀を復活させるためのモデルケースとして、世界資源研究所、米国務省、世界銀行の森林専門家たちにも注目されている。

「これらの木は私たちの遺産です」とンコウリさんは話す。「両親の世代は自由に伐採し、心配することなどありませんでした。しかし、私たちは気付いたのです。私たちが植樹しなければ、子供たちに何も残してあげられないかもしれないと。私たちはカメルーンの森の未来をとても心配しています」

 

 

 

 

 

アフリカの森が危ない

 アフリカ中央部では森林伐採が急増している。国際林業研究センターによると、このままのペースだとカメルーンは2035年までに2万平方キロメートル(四国より大きい)もの森林を失うという。カメルーンでは、森林がパーム油やゴム、ココアのプランテーションに変わり、小規模な焼き畑農業も行われている。アジアや欧米からの木材需要も、合法、違法にかかわらず伐採を促している。さらに、カメルーンは、木材輸出のための巨大な港も建設しようとしており、中国がそれを支援している。

 しかし、カメルーンの森林管理政策は、そうした問題への対応が遅れている。原因は資金不足や信頼できるデータがないこと、それに汚職のまん延にあると専門家は指摘する。

 カメルーンの首都ヤウンデでNPO環境開発センターの指揮を執るサミュエル・ングイフォ氏は「持続可能とは程遠い状況です。だからこそ森が消えているのです」と語る。「森林伐採によって得られるものなど、失うものに比べたら何でもありません」

 黒檀が、そうした悪い流れを変えてくれるかもしれない。コンゴ盆地に自生する黒檀「Diospyros crassiflora(通称アフリカン・エボニー)」は15世紀、ポルトガルからやって来た入植者によって、象牙、奴隷とともに初めて取引された。きめが細かく、自然な光沢をたたえるため、木材の宝石と評価されたが、建築にはあまり適さない。そのためカメルーンの木材輸出は現在、加工しやすい他の木材が主流で、黒檀が占める割合は全体の0.1%にも満たない。

 それでも、黒檀の価値は変わらず、今でもギタリスト、バイオリニスト、ピアニストといったミュージシャンの弦や指に酷使されている。ボブ・テイラー氏は米サンディエゴに拠点を置くギター製作の第一人者だ。1980年代、手づくりのギターがニール・ヤングに愛用されたことをきっかけに、カルト的なファンを獲得し、数百万ドル規模の会社を築いた。以来、テイラー氏は業界の中心人物であり続けている。テイラー氏は2011年、ヤウンデ郊外で廃業した黒檀の製材所が売りに出されていると聞き、不安定な供給を改善するチャンスだと思った。

 高級ギターには5種類以上の木材が使われることもある。黒檀、紫檀、マホガニーなど、過剰伐採や気候変動といった脅威にさらされている種も含まれる。テイラー氏によれば、これらの木材は近年、価格が高騰し、入手困難となり、しばしば国際取引規制の対象にされるという。

「間違いなく、ギブソンの一件が警鐘になりました」とテイラー氏は話す。「ギターメーカーはそれまで、木材がどこから来るかなど気にしていませんでした。しかし今、その木材が消え去ろうとしているのです」

 ヤウンデ郊外の製材所を購入して間もなく、テイラー氏は現地の黒檀業界が腐敗していることに気付いた。森から製材所まで木を運ぶ道中、地元の当局者や警官に賄賂を渡すのは日常茶飯事。製材所に運ばれてくる木の正しい原産地を追跡することはほぼ不可能だった。さらに、年間300本ほど運ばれてくる木のうち、一部は廃棄処分となり、森に放置されていた。内部の黒さが足りないと判断されたためだ。

 そこで、テイラー氏は製材所を刷新し、疑わしい木材調達を取り締まることにした。テイラー氏は米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)コンゴ盆地研究所の所長トム・スミス氏と会った。スミス氏は数十年にわたってカメルーンで働いた経歴を持ち、テイラー氏がギターに詳しいのと同じくらい、森林生態学に精通していた。

 スミス氏とテイラー氏は、ギターという魅力的な楽器に使われている木材なら、森林再生のケーススタディにぴったりだと判断した。

「ギターが熱帯雨林の消滅を引き起こすことはありませんが、人々の関心を引き、木材製品に対する意識を高める手段になります」とスミス氏は説明する。「黒檀のプロジェクトは、熱帯雨林そのものの持続可能な再生方法を開発するための入り口です」