SoLライター陣がおすすめするカルチャーアイテム。
今月のテーマは「夫からの印象的なプレゼント」!!


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夫とお付き合いを始めて1ヶ月そこそこで遠距離恋愛になって3ヶ月目。私と彼は完全に盛り上がっていた。会えない時間が育てた欲求不満……もとい愛を深めるべく夏の休暇を一緒に過ごそうということになった。


「陶子の誕生日も近いから旅行をプレゼントするよ」


そして旅行会社で彼が手に取ったのは「ハワイ7日間」のパンフレットだった。彼の恋の病は私の病と比にならないくらい重病だった。
「新婚旅行ですか?」とにこやかな旅行会社の方に彼は「まぁ、そんなところですかね」とテレながら言い放った。


そんなところって、どんなところ?
7日もの間、未知の生物同士が遠くの異国の地で寝食を共にして大丈夫か?捕食同士だったら血生臭い旅行だ。


旅行では目が覚めるまで眠った。波音を聴きながら木陰で本を読んだ。手を繋いで散歩をした。笑い転げ美味しいものを食べた。水の中も星空の下も一緒だった。


旅の過ごし方が似ていた。この人となら何日、何年、何十年と旅をしても楽しいだろうと思った。


「来年もその次の年も連れてくるから」


ベッドに寝転んで夕日で本を読んでいる私に向かって、夕日のバルコニーでビールを飲む彼が言った。ちょっぴり涙が出そうになって波音に合わせて呼吸をしながら寝たフリをした。


翌年、私たちは同じ夕日をそんなところの新婚旅行で二人並んで見ていた。


written by 葵陶子