ああタコが食べたい! 6日間の岡山・広島旅行も終わろうとしていた。 広島で見かけたタコ唐揚げを食べたかったが、どの店もお値段高めでなんとなく分不相応だと思いとどまっていた。名物の牡蠣も解禁しておらずお預け。不思議なもので一度あれが食べたいと強く願ったものというのはやはり諦めがつかないものだ。 諦めていたタコ。事態は思わぬ方向へ進んだ。 真っ青な空に直線を走らせる瀬戸大橋を見ながら大はしゃぎしている中、なぜかタコを食べたいという私の言葉が効力を保ち続けていた。同行したSがタコを食べられる店を探してくれていたのだ。 タコ干物の土産物/ タコ漁に使うタコツボ とりあえず下津井の港へ行けば何かしらタコを出すお店がやっているだろうと地元の漁師さんに聴いた。しかし「日曜じゃからほとんど閉まっとるだろうけどあっちのほう行ってみぃ」程度の返事しかなかった。 確かに人が居ない。 コレはただ綺麗な海を見て終わりの予感。 駐車場が混み合う一軒の無難そうな海鮮料理店があり良さそうだったが、Sは地の物、タコ料理専門店にこだわった。何回か店の前を通り過ぎては時間を空け再び同じ店の前にきた。ぱっと見、よくある昭和の白い壁の建物で、特にしゃれた感じもなくメニュー、価格も不明、怪しさ満点。専門店の雰囲気もないお店だったがSはここが良い!とよくわからない自信を持っているので一行はついていった。 店の名は 「保乃家(やすのや)」 店に入ると、タコの入った水槽があった。生きている!ここで一気に専門店の雰囲気アップ!ところが店内の暖簾をくぐるやいなや 「あ~、予約ないのね、ごめんね~。」と厨房に立つ90歳位のおばあちゃんに言われ早くも追い出しのピンチ。退店を促され苦笑い。牛歩戦術でトボトボ歩き始めると幸運にも店の大将が「タコ飯とか団子ならあるけどそんなんで良い?」と言ってくれたのでもちろんOK、ドライブがてらついでに寄っただけだったが「東京からわざわざ来た甲斐があった」と伝え。 案内された席はカウンター席の調理の様子も見える最高の席に4人。めちゃめちゃラッキーだった。席に座ると先ほどの大将が「タコが居らんから4人でコース2つはどう?」と提案してくれたので、(そういう料理人のおススメが大好きなS)は快諾した。 しかしメニュー表も出されず財布や同行者との相談も出来ない。 その後次々予約の無い一見客が来店するがタコが禁漁時期で不足しており門前払い、「また寄ってね~」状態。 唯一誤って魚の網に掛かったタコのみ合法的に調理する事が出来る時期との事。 タコ様の気分次第で営業の是非が決まるらしい。 後程この話の流れから一同驚愕の話を聞く。 ここからがタコ専門店のショーの始まり! 大将は生きている真ダコを片手に「これね!」と言って写真を撮る間もなく白いまな板の処刑台にタコをどんと置いた。あえて吸盤をまな板の上に貼り付けさせてすぱ~っと細長いナイフを板と平行にしてタコの足を鮮やかに割いた。切ったばかりのタコ足は主を探すかのようにウニョウニョとステンレストレーの上でうごめいていた。 「おお~」私とSのお父さんは興味津々でカウンター席なのに覗き込むようにして立ち見した。ここからがコース料理の始まりだ。 1.タコの卵 卵焼きだけど、タコの卵が入っている。粒粒していてタコの濃い旨味がした。美味しい。食べながら、大将は料理していたが話しかけてもよかろうかと迷いつつ色々と聴いたのでご紹介。 Q1.イカ墨のパスタと同じようにタコ墨パスタもできるのか。 A1.タコは墨の量がイカより少なくてできない。でもタコのインクで書くとみんな上手に書けるよ。 と言いながら「タコ」という雑誌をもってきてはタコの墨の量の少ないことを示し、こう書けるよと言いながらお坊さんがタコ墨で書いた色紙を見せてくれた。「タコ」という雑誌の存在にも驚いた。しかも8月号。 月刊かい! Q2.タコって何を食べるんですか。 A2.タコは美食家でね、カニとか貝、伊勢エビとか食べちゃうの。その美食家を食べるんだから美味しいわけだよね。ついでにきれい好きなんだ。タコつぼの端に牡蠣とか着くと嫌がって落そうとする。 2.タコのつみれ団子 南蛮漬けのようなたれをかけて玉ねぎと共に頂く。タコの白子入りだ。 Q3.タコはオスのほうが大きいのですか、それともメスの方が大きいのですか。 A3.タコはね、分からないの。切ってみて精巣があればオスって分かる。これ言うとね、~もそんなものだって言うよ。 「タコの白子は1つ」と言いながらコロンと白い精巣を見せた。Sは「人間は2つですね」とすかさず言う。 Q4.タコ漁は何時ころするんですか。 A4.朝の4時から正午まで。 3.いぼ酢 タコの足にあるイボの酢漬け。他ではまず食べることはないだろう。 「タコは冬が美味しいよ。年末年始料金になるから上手な人は12月20日ころから予約してくる。今年も忙しくて12件マスコミ取材を断った。お客さんを大事にしたいからね。」お客を大事にする、その気持ちに心打たれた。 知らない内に大将は消えていた。 何処か裏で唐揚げを揚げていたらしい。 4.タコの唐揚げ ついに出た!広島で一目見てからずっと食べたいと思っていたタコの唐揚げ。 なんとも品よく盛り付けられていて、まさに美味!!舌包みを打つ! 5.タコ飯 タコの釜めし。彩鮮やかなお野菜と共に食す。もうかなりお腹一杯になってきた。 やや年寄りには厳しい歯応えでほっぺを噛みそうになる。 6.タコの刺身 丁寧に皮を剥いであるのでタコの赤い色は一切入らない美しい刺身。Sのお父さんが何度も「他の客には有ったけどウチらにも出るかな?」と気にしていた一品。 塩や醤油を付けなくても明らかに甘く最高の歯応え。 7.タコの味噌汁 最後にタコの味噌汁。スーッと頂く。 お腹一般なのにホント美味い。 以上、見ての通りタコずくし!タコのフルコースでした!エンターテイナーの大将のお話を聴きながら心もお腹も一杯になりました! 海外からも噂を聴いて食べにくるほど大当たりのタコ専門店 保乃家 ぜひ岡山に来たときは立ち寄って見てください。絶対に予約が必要です。朝の漁で取れなかったときは残念ながらキャンセルとなることもあるらしいです。 禁漁の件で聞いた話。 目の前の下津井漁港で小型のイイダコというタコは獲っても良いが禁漁期のマダコは法律違反。 漁船の動きを海上保安庁の方が双眼鏡で遠方から見ているらしい。 四国から来た人がマダコ釣り上げたのを持ち帰ろうとしたのがバレて罰金20万を請求されたとの事。知らなかったでは許されないルール。 今回のお支払いタコづくしコース×2やビールなど注文しては4人で18.400円でした。 高めだけど大将が元気なウチに後継者の居ないこの店の雰囲気を味わえたので大満足。 元祖たこ料理 保乃家 086-479-9127 (要予約・問い合わせ) 岡山県倉敷市下津井1-9-33