カフェにて

ある夜、私が友達とカフェのカウンターに座って、ちびちび飲

んでいると、たくましい若者がカフェにはいってきた「きみ、

たくましいねぇ」と、友達が言うと若者は力自慢をする。「ふ

っふっふっ。俺は市場で労働者として働くかたわら、ジムにも

通っているんだ。」と言って、置いてあるレモンをコップのう

えで思い切りしぼると、コップがジュースで満タンになった。

「どうだい?」みんなが驚いていると、別のはちきれんばかり

に筋骨隆々の中年男がきた。「はっはっはっ。その程度かよ」

「なに!?」「おれは腕相撲の世界チャンピオンなのさ。ま

ぁ、見てろよ」そう言うとさっきのからからになったレモンを

絞り上げた。するとまたコップが満タンになった。「すごいー

ー」みんなは拍手喝采して、若者はシュンとした。中年男が誇

らしげに「俺以上の力自慢はいないか?」というと、咳はごん

ごん、喉をゼイゼイいわせた、やせ細った老人がよぼよぼとち

かづいてきた。「わしがやろう」「じいさんが!?ははは、無

理無理」老人はそれを無視した。そして「失礼」といってから

からになった例のレモンを軽く絞ると、ジュースがザーッほと

ばしって、コップからあふれだし、レモンはすっからかんにひ

からびてしまった。老人は一礼して手をこすりながら店から出

て行った。2人の力持ちは、たがいに顔を見合わせていた。

「一体、あのおいぼれはだれなんだ?」「たいした怪力だぜ。

あんなのは初めてだ。」するとバーテンがいった。「あのひと

ですか。あれは税務署の役人です。」