剣法というものは、要するに相手の間あいのなかに放胆に踏みこむほかに手のないものだ。踏みこんで、相手を圧倒威嚇することによって、恐怖をおこさせ、瞬間ながらもまひした相手の反射能力の停頓(すき)につけ入って斬りさげる。要諦はそれ以外にあるまい。あるとすれば、それは職業剣客が自分の流儀を売るために考案した些末な小細工に過ぎない

山田寛斎