中学生になって、兄貴が剣道部だったことを何処で聞きつけたのか、ひとりの女の子が私に近付いてくる。
F子さん・・・
「私、剣道部に入りたいんだけど、MAAさんはお兄さんが剣道部なんでしょ?一緒にやらない?」
その頃、剣道部に女子は居なかった。
女が剣道など普通の親は反対するところが多かった時代・・・。
幼い引っ込み思案の私は母に相談する。
バレー部に行こうと決めて一日入部したが、悩んだ末、剣道部に入ることにする。
あの頃は何でも母の云うとおり・・・だった。
初めての女子部員という事で珍しがられて3人入った女子の中で、何故か女子の代表のように練習試合とかでも男子に混ざって一人試合に出して貰えるようになった。
私を誘ってくれたF子さんは2年なって気持ちが冷めたのか辞めたけど私はそんなに器用に気持ちを切り替えることが出来なかった。
それに加えて、2年になって同じ部の男子に初めての恋心であった。
中学で初めて好きになった人は同じ剣道部のタメ・・・。
近くに居たいと云う理由だけで、辞めるわけにはいかなかった訳で・・・。
文字通り、初恋であった。(今、思えばかなりの晩熟であった)
ホントに傍に近づくだけで心臓がバクバクいっていたなあ・・・。部活で、稽古中に好きだった人と腕と腕がじかに触れてしまった事があって、びいイイ~ンと感電したようになってびっくりして思わず、わああっと慌てて逃げた私を見て不思議そうに「どうした?」って云った・・・。
いろんな事に純で感じやすくて脆い自分がいた。
2年になると女子部員がどんどん増えていった。女子チームが作れるくらい・・・。
そして男子と稽古していることでどんどん強くなっていった。
私は、内面的には、何にも変わっていなくて・・・心は、とてもシャイで、寡黙な小学校時代のままなのに、印象は活発な男の子のような人・・・というふうに見られていたらしい。
お陰で3年生になってお勉強の出来る子は勉強に専念したいばかりに、そんな子達の策略で学級委員長にさせられてしまっていた。
私に委員長を押し付けたお勉強の出来る学校進学組みの嫌なヤツを恨みながら、全然向きじゃない、何にも出来ない、HR委員として情けない中学3年の1年間を暗く過ごすことになったのだった。