元NHKの池上彰さんを見て思うこと
iPadに触りました。
第一印象は「美しい!」。
でした。
とても綺麗で、魅力的。
キンドルがとても地味に思えました。
これなら買いたい!
誰もがそう思うでしょう。特に若い人ならば。
第二印象は「重い!」
でした。
自宅のソファーに寝転がってiPadを操る。
寝ながらiPadで本を読む。
でも、少し重過ぎる。
この二つの印象が今後のiPadの売れ行きを左右するのでは?
そんな印象でした。
このiPadを使ってどんなビジネスアライアンスを組み立てられるか?
これからの広告会社にとって重要な課題だと思っています。
先日某大手新聞社の幹部に会いに行ったとき、常套句のように私は彼らに訊ねました。
「iPadについてどう思いますか?」
「あんなものは・・・・・・新聞は手にとってめくらないと・・・・・・・」
思わず絶句してしまいました。
気まずい雰囲気が一瞬ですが室内に流れました。
新聞社の現実とはこんなものなのです。
電子ブックリーダーの出現は出版文化の破壊ではないのに。
何故、前向きな共存の道を目指そうとしないのでしょうか。
閑話休題
広告会社で働く人間にとって最も重要な資質の一つがクライアントの前で行うプレゼンテーション能力です。
マーケットリサーチし、何度も打ち合わせを重ねて書き上げた企画書をクライアントの目の前で披瀝するのがプレゼンターの役目です、
用意周到に準備した立派な企画書が手元にあっても、当日のプレゼンターの能力如何でクライントに与える印象が大きく変わってしまうことがあります。
20年近く前、レコード会社から広告会社に転職した時に、一生懸命勉強したのがこのプレゼンテーション技法でした。
色んな本を読み漁りました。
そんな中での基本中の基本は
「難しいことをやさしく話す」技術(能力)だと言われました。
ところが、意外と多いのが「やさしいことを難しく話してしまう人」です。
特にクライアントの前で緊張したりする人にこの傾向が多いようです。
ロジカルに、そして簡潔な言葉で、マーケティングプランをプレゼンすることが使命の広告会社で働く人にとっては「難しいことをやさしく話す」技術は不可欠です。
NHKの「週間こどもニュース」を担当していた池上彰さんは、そういう意味では「難しい時事問題をやさしく解説する達人」ではなかったでしょうか。
それが証拠にNHKを退職した今、「まなべるニュースSP」他民放各局で引っ張りだこの人気です。
インターネットでニュースを検索する人も、同じように「難しい時事問題を簡単に解説する見出しと本文の斜め読み」で済ませる傾向があります。
深読みはしないようです。
だからでしょうか、最近は新書版のビジネス解説書が常にベストセラーランキングの上位に並んでいます。
でも、でも、私自身の反省を含めて言うと、「ホントにこれでいいの?」というのが最近の正直な気分です。
4月15日の日本経済新聞夕刊「音楽と映像の微妙な関係」(久石譲)にそのあたりのことが書かれていたので紹介します。
「わかりやすいということは決して良いことではない。難解な映画や音楽、絵画などに接したとき、これは何?、という畏怖にも似た疑問がおこる。だから頭を働かせる。わかろうとするからだ。あるいは自分の感覚を最大限に広げて感じようとする。そこにイマジネーションが湧く。」
久石さんは、マーラーの5番を使った「ベニスに死す」 や「ツァラトゥストラはかく語りき」を使った「2001年宇宙の旅」を例に出して、この事を解説しています。
同感。
私も同じ考えです。
限られた時間内でビジネス書やマーケティング関連書籍を読むことの多い我々広告業界の人間にとっては耳の痛い話でもあります。
だから、私は時間の許す限り映画を観るようにしています。
それもアート系という芸術性の高い作品を意図的に観るようにしています。
「考える」ことや「わかろうとする」力を忘れないために。
過日亡くなった母校の先輩でもある井上ひさしさんは、こう書き残しています。
むずかしいことをやさしく
やさしいことをふかく
ふかいことをゆかいに
ゆかいなことをまじめに書く