未来の記事を書く新聞記者 | ソフィアの森の「人生は、エンタテインメントだ!」

ソフィアの森の「人生は、エンタテインメントだ!」

音楽が好きで、映画が好きで始めたブログですが、広告会社退職後「ビジネスの教訓は、すべて音楽業界に学んだ」を掲載しました。

新橋に「炉端」という小料理屋があります。

正確に言うと居酒屋と小料理屋の中間ぐらいで、15人も入れば満席になってしまうお店です。

80歳前後の母親と50代の娘の二人で経営しています。

この娘が客に対し、時に小気味良い皮肉を浴びせるのですが、これが的を得ていることが多く、この会話を楽しみに通う常連客が大勢います。

私もそんな客の一人です。

先日、ふらっと立ち寄ったら店内は満席に近く、たまたま空いていたカウンターに腰をおろした途端、隣りの客から声をかけられました。

某新聞社で長年映画のレビューを書いている名物記者のOさんでした。

Oさんは既に67歳。

定年後も映画専門記者として健筆をふるっています。

この炉端というお店は昔から映画関係者や音楽関係社が多く集まるのです。

私などはいまだに若手扱いです。

Oさんとしばらく映画業界人事の話をした後、話題が予定稿の更新という話しに移っていきました。

予定稿というのはあらかじめ準備された死亡記事のことです。

ジャンルで分けているそうですが、一人の記者が平均20から30本くらいの予定稿を来るべき日のために準備しているそうです。

Oさんの口からは現在更新中の映画人の名前が次々に出てきます。

それも確率の高い順にです。

その中には、最近見なくなったかつての大女優もいました。

あの人も、この人も、あぶないのかと思うと不思議な気分になります。

未来の記事を日々更新している新聞記者の仕事、何とも言えない切なさが込み上げてきました。

別れ際にOさんに言われました。

あなたの好きなメルヴィルの「海の沈黙」、早く岩波ホールに行かないと終わっちゃうよ!

焦るカゼ




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