「私は、いつかの授業で言ったことがありますよね。
『男性のおしゃれの最初のステップは、
まず誰の目から見ても好感度のある、
シンプルで清潔感のあるアイテムに着慣れることです』
って。
それは、さきほどお話ししたように、そのような服を着ると、
いろんな方に受け入れてもらいやすくなるからなんですよ」
「理論的にはとってもよくわかるんです」
だが俺の心にはまだ引っかかっていることがあった。
「よくわかるんですが、
僕は、そんな普通っぽい服を着ることにすごく抵抗があるんです。
もしそんな服を着たら僕は僕でなくなってしまうような気がするし、
第一絶対に似合わないと思うんですが…」
その時、スクールの扉が空いた。兄貴だった。
「おお祐二やないか!来とったんか」
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兄貴は俺を見て歓声をあげた。そして兄貴は俺の手を握り、
ぶんぶん振りながら大はしゃぎした。
そんな兄貴を見て、俺と先生は思わず吹き出してしまった。
兄貴はひとしきり大喜びした後で、ふと思い出したように聞いてきた。
「で、先生と何を話してんの?珍しいやん」
俺は兄貴に、自分がシンプルな服を着ることに抵抗があることを話した。
兄貴は能天気に言った。
「大丈夫やって。お前そういう服絶対似合うわ。なんせ元がいいからなあ。
兄ちゃんが保証したる」
「兄貴が保証してくれても、嫌なもんは嫌やねん」
しかし兄貴は自信満々に胸を張り、こう言った。
「先生、俺に任せといてください。責任持って、祐二を変身させますから!」
「兄貴、張り切りすぎやって」
「なあ祐二、この授業終わったらすぐ服買いに行こ。
兄ちゃん、すごくいいシャツ売ってる店知ってるねん!」
「うるさいわ。そこ、もともと俺が教えた店やろ?」
「あ、そうやった」
兄貴は子供のような無邪気な顏で笑った。
11話に続く・・・
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