兄貴から信じられない頼みをされた、兄貴はさらに畳に頭をこすりつけた 3話 | ファッションをわかりやすく説明するスタイリスト土居コウタロウ ブログ大阪梅田東京新宿

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兄貴が洋服のことを言いだすなんて全く珍しい。

お人良しでいつも人の影に隠れ、親戚の人たちにさえ、

「祐二くんのお兄ちゃん」と呼ばれてしまうほど、影の薄かった兄貴である。


カッコつけるだとか、目立とうとする、なんていう言葉は、
兄貴には一番似つかわしくない言葉だった。

よって、兄貴の辞書には、ファッションの「ファ」の字も無かったと思われる。


だが人は、変わりたいと真剣に願う時があるのかもしれない。

何かが心の内側のドアを叩き、強引に、今までの自分と違う行動を
とらせようとする時があるのかもしれない。



その時の兄貴は、およそ兄貴らしくない大胆さで、自分の人生を変えようとしていた。





兄貴はその夜帰って来て晩御飯を食べた後、珍しくパソコンと向き合い、
長い間インターネットを見ていたらしい。



俺は10時ごろバイトを終えて帰宅し、すぐ自分の部屋に行こうとした。
だが兄貴に呼び止められた。



「祐二、悪いけどこっちに来てくれへんか」


俺が兄貴のところに近づくと、兄貴はあるホームページを指さした。

「なあこれ、どう思う?」



それは「LUCEおしゃれスクール」というホームページだった。

これが、俺とおしゃれスクールの、最初の出会いだ。



「おしゃれスクール?なんやねんそれ」

「実はな、朝言ってた先輩に聞いてん。『どうして先輩は、
 洋服を選ぶことは相手へのおもてなしだと気づいたんですか?』って。

 そうしたら先輩、このスクールのこと教えてくれてん。先輩はこのスクールに
 行き出してから、おしゃれになっただけじゃなく、自分に自信が持てるようになって、
 奥さんともラブラブになって、更に営業成績も上がったんやって」



「うそやん!そんなにうまいこと行くわけないわ」


「ほれ見てみ。主催者のブログにも書いてあるわ。
  『ファッションは、相手へのおもてなしです』って」



俺はそのブログを読んでみた。それは、そのスクールの主催者である男性が、
自分の伝えようとしているおしゃれについて様々な角度から説明しているブログだった。

しかし、なぜか俺は、その男性のことが好きになれなかった。
俺の中の何かが、この人のことを信じさせることを止めていた。



「あかんわ、兄ちゃん。俺この人嫌いや」


「そうか?俺は、けっこういい事書いてはるって思うけどな」


兄貴は、わかりやすくしょんぼりした。俺は何か嫌な予感を感じ、
わざとふざけた調子でこう混ぜっ返した。


「なんや兄貴。もしかして、その『おしゃれスクール』に通いたい、
  なんて言うんとちゃうやろなあ!」




すると兄貴は突然、はじかれたように土下座をしたのだ。


「お願いや祐二!この『おしゃれスクール』に一緒に行ってくれ!」


「はあっ?!何言うてんねん」


予想を超えた展開だった。兄貴だけならまだしも、
なぜ俺までそのスクールに行かなくてはならないのだ。

だが兄貴はさらに畳に額をこすりつけた。





パーソナルスタイリスト土居コウタロウ




4話に続く





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