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人気ピアニストに憎悪する譜めくりの女の復讐劇。
フランスのドゥニ・デルクール監督の作品です。監督自身が著名なヴィオラ奏者ということもあり、クラシック界の裏側を観たような気がします。
頭脳明晰な大学生メラニーが、人気ピアニストであるアリアーヌに近づき復讐するというストーリーなのですが・・・。
精肉屋の娘として決して裕福ではない家庭に育ちながらも類まれなピアノの才を持つ少女メラニー。彼女にとってあの入学試験が人生のターニングポイントだったのでしょうね。
落ちたのなら、またチャレンジすればいい・・・。初めはそのように思ったのですが、クラシック界はそんなに甘い世界ではないということのなのでしょうか。それとも、貧しい家では(といっても一般的な家庭のようにも見えますが)ピアノのレッスン代や維持費を捻出するのも一苦労だということを幼いながらもメラニーは感じていたのでしょうか。
または、メラニーのプライドが許さなかったのか・・・。能面のような彼女の表情から、そんな大人びた考えも持っているのでは?と感じられました。
試験に失敗したメラニー。彼女はその原因が自分ではなく審査していた人気ピアニストのアリアーヌにあると思い込むのです。
まぁ、アリアーヌも悪いと言えば悪いのですけどね(^_^;
数年後、メラニーは弁護士事務所で実習生として働きます。ある日、所長である弁護士のジョン・フシェクールが息子のトリスタンの子守を捜していると噂を聞いたメラニーは、ジョンへ積極的に志願します。優秀だったメラニーを信頼したジョンはこれを承諾。早速、メラニーはジョンの邸宅へと向かいます。
駅に降りたメラニー。迎えに来たのはジョンの妻と息子トリスタン。
・・・そう、ジャンの妻はあの人気ピアニストであるアリアーヌだったのです。
はたして、メラニーとアリアーヌの運命は・・・?
このような復讐劇の場合、とかく2人の対決がクライマックスに用意されていると思うのですが、この作品は不思議な展開をみせます。
アリアーヌの感情がなぜあのように大きく揺れ動いたのか・・・う~ん、わからん(^_^;
それにしても、子守というからトリスタンはチビッコなのかなぁと思いきや結構大きな少年でした・・・あの歳でまだ子守が必要なの?
メラニー役にはデボラ・フランソワ。「ある子供」では、強く、脆く、そして大人へと成長しきれていない少女を好演していましたが、この作品でもメラニーの冷たい表情を巧みに演じています。ストーリーでは描かれていないメラニーの心を彼女の演技で伝えているように感じられます。
アリアーヌ役にはカトリーヌ・フロ。「地上5センチの恋心」ではメルヘンチックな女性をコミカルに演じていましたが、この作品では打って変わって、神経質で壊れやすい芸術家肌の女性を演じています。
ラスト。
心理的に追い詰めるメラニーの巧みな罠。もちろん計画的に仕掛けているはずなのに、相手から自然と壊れていくような・・・そして、すべての罠が同時に結末を迎えるクライマックスは見応え十分でした。
メラニーはその場にいなくても結末は判っていたのでしょうね・・・コワッ。
でも、メラニーは復讐して気が晴れたのでしょうか。しばらくしたら、何も満たされていないことに気付くのではないでしょうか・・・。
・・・何だか虚しさだけが残る作品でした。
Title:
LA TOURNEUSE DE PAGES
Country:
France (2006)
Cast:
(Ariane)CATHERINE FROT
(Mélanie)DéBORAH FRANÇOIS
(M. Fouchécourt)PASCAL GREGGORY
(Virginie)CLOTILDE MOLLET
(Laurent)XAVIER DE GUILLEBON
(Mme Prouvost)CHRISTINE CITTI
(M. Prouvost)JACQUES BONNAFFÉ
(Tristan)ANTOINE MARTYNCIOW
(Mélanie enfant)JULIE RICHALET
Director:
DENIS DERCOURT
