tragedy of vanity
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「けいおん!」の映画を見てきた。

映画「けいおん!」劇中歌アルバム放課後ティータイム in MOVIE/VARIOUS ARTISTS

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本来ならばブログなど書いている場合ではないのだが、こればかりは記憶が新鮮なうちに文章にしておいた方が良いだろう、と言うことで、「けいおん!」の映画をレイトショーで鑑賞してきたのでその感想を。ネタバレはなるべくないように書きたいが、文章力がないので、気になる方は以下注意。

自分が見に行った映画館は割とデートスポットとしてリア充達に重宝されている場所ではあるのだが、だからこそ、平日の夜遅くに公開から二週間ほど経過した、大きく括れば「萌えアニメ」に位置づけられる本作を、そんな場所で見に来る人はそうそういないだろう、と思っていたが、以外とカップルで来ていやがった連中が多く、「けいおん!」とは所謂日常系深夜アニメとしてかなり成功したケースなのだな、と改めて痛感した次第である。

「けいおん!」のどのような部分が多くの人を惹き付けているのか、他の日常系等と比べてどこが優れているのかは、中々把握出来ないし断定する程の考察力も持ち合わせていないが、俄アニメファンなりに感じるのは、「口当たりの良さ」が大きいのではないかと思った。
等身大の学園生活、ご都合主義だけど親近感の湧く緩やかな日常、バンドや音楽、という要素を適度に引っ掛けながら、些細な挑戦やトラブル、幸福を含ませた青春ドラマを描き出す。
それに対して視聴者は、ちょっぴりはらはらしたり、応援したり、ほっこりしたり、萌えたり、ホロッと来たりする。ある種ギリギリだが絶妙なバランスの良さだ。
ここからかわいらしさを引き抜き過ぎれば淡泊なお子様ランチになるし、逆にこれ以上に萌えを注入すれば、スイーツはそっぽを向く濃厚なジャンクフードになり得る。
繊細な風景描写にべたべたし過ぎないふんわりとしたキャラクターデザイン等も相まって、アニメクラスタ、ライトオタク辺りを始め、そっち系のカルチャーに寛容になってきた、本来門外ともいえそうな層も(飽くまで二十代位までであろうが)器用に取り込んでいった作品に思える。
こうした、悪く言えばあざとい部分が反感を買う要因でもあるのかもしれない訳だが。映画館で配布していたリピートポイントシートなる物(三回見ればメモリアルファイルがもらえるらしい)での搾取っぷりは何とも・・・w。

無駄な前置きが長くなったが、前述したような間口の広さをテレビ放映時以上に上手く集約しようとしたのが、今回の劇場版なのではないだろうか。
さすがに一時期けいおん厨と言っても過言ではないくらい、この世界にのめり込んでいた人間故に、中々初見視点で本作を鑑賞することは困難ではあるのだが、これまでグダグダ書いてきた、「けいおん!」において軸に思える要素を上手く全編に散りばめている印象を受けた。
前半の萌え比重の多さは若干萎えたが、時間が経つに連れて、主要メンバーは勿論のこと、準レギュラーや懐かしのバンド仲間、元々モブだったクラスメート達まで、キャラクターの持ち味や個性を上手く摘出・配置していて、ファンにも新参にも配慮したストーリーっていうか演出は中々引き込まれ、何より巧みだと思った。最終的には涙腺緩んでいたしw。

放課後ティータイムが日本を飛び出して、ロックの聖地イギリスに(三泊五日で)降り立つ! これって本来すごくスケールの大きいスペシャルな出来事が起きそうなのだけど、彼女たちの場合、どこに行こうが結局いつものペースで勝手に楽しんで、僕らを微笑ませてくれるから、もしかしたら五人が揃えば舞台はどこでも良いのかもしれない。
実際、今回もイギリスでの演奏シーンや作画の美しさなど、見所は多いが、それが必ずしもストーリー上において極めて重要なポイントではなかった様に思える。
むしろクライマックスはイギリス旅行で感化された部分も含めこれまでの生活をを通して得たモノをあれこれと考え音楽にしながら、テレビ放映の最終回へと繋がっていく帰国後のドラマだ。

彼女たちにとっての事件はバンド内での抗争でもましてや失恋や大切な人の死なんてヘビーなものではなく、突然イギリスの寿司屋で訳も分からず演奏することになることや、先輩だけの秘密の計画が後輩のあずにゃんにばれないか、という程度の非常に地味なレベル。だけど俺はそれを見ながら、やはり気づけば事件を乗り越えて少し前進するあの子達を見て感情を揺さぶられた気がするよ。

アビイロードでも、イギリスでの野外ステージでも、通い慣れた学校の屋上でも、ライブハウス化した教室でも、放課後ティータイムが集まればそこはきっと安らかな日溜まり。
それに対して違和感を覚え作為的に捉えるのではなく、純粋な気持ちで幸福を享受することがこの映画を楽しむコツだ。
良いんじゃないかな、二次元の日常でくらい終始夢見心地で。
本作には少なくとも見る者をそういう気分にさせるだけの効力はある・・・と思いたい。(りっちゃん風)

Kanye West & Jay-Z/Watch the Throne

ウォッチ・ザ・スローン(初回完全限定盤スペシャル・プライス)/ジェイ・Z&カニエ・ウェスト

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もしかしたら、初っ端の「No Church In The Wild」が既に本作の全体像を端的に表現しているかも知れない。
幕が上がった最大級のショーに対して期待感を早速くすぐられる硬いビートが鼓膜を刺激し、Phil Manzanera、Spooky Tooth、James Brownを大胆かつ巧みにサンプリングした渋いトラックに昂揚、更にFrank Oceanによるほろ苦い歌声に酔い、もう一人の客演シンガーThe Dreamのセクシーな声色でなぞられるミステリアスなコーラスにハッとする。
これだけでオープニングの質感としては余りに贅沢な仕上がりだが、加えてそこへ圧倒的なキャリアに裏打ちされた二人のMCによる貫禄のヴァースが載ってしまう。
ジェイがJesus was a carpenter, Yeezy laid beats/ Hova flow the Holy Ghost Get the hell up out your seats と威厳を示し、カニエはWhen we die the money we can’t keep/ But we probably spend it all Cuz the pain ain’t cheapと戯ける。
ライムに虚勢ではない説得力の伴った鋭利な切れ味が備わった、この二人だから許される説教(preach)ですね。

その後も、抜群な声量から放たれる伸びやかであり太くもある歌声が強烈に映えるJay-Zの嫁ビヨンセ参加の「Lift Off」、シリアスなトラックでリリックには優しさが生まれた「New Day」、軽快なビートにこれまた豪勢なサンプリングを織り交ぜって突っ切る「That's My Bitch」、オープナーから再登場のFrank Oceanによるスウィートなフックと美しいトラックで浮遊感さえ漂わす「Made In America」等々、ポップミュージックとしても、ヒップホップとしても上質なナンバーがズラリと並ぶ。
ひたすらストリートで牙剥き出しっぱなしのギャングの傲慢でも、ましてちんけなパーティーポップの馬鹿騒ぎでもない強度が本作にはある。

その異質なまでの強さの大本は、何て言うか、すんげー金掛けてるんだろうなー、みたいな事に起因するのだと思う(笑)。
飛び抜けたリッチさ故に成り立っている、厳つくて趣味の悪いハードコアなアングラさとメインストリームに殴り込む豪勢なポップさを同位させたカニエ×ジェイ Zならではの味わい深い魅力を惜しみ無く披露している訳で、当然内輪の単なる道楽では終わっていない。

Pitchforkで満点を叩き出したカニエの『My Beautiful Dark Twisted Fantasy』は革新的なアイディア、ユーモアで以て一曲一曲が鮮烈な存在感、灰汁の濃さを有していたにも関わらず、尚かつ一枚通して聴いた後に更に壮大なストーリーが展開されていた様なトータリティの高さまで提示し、形骸化されたラップミュージックの枠を越えた傑作でしたが、本作にはああした深遠さ、懐の深さなどは希薄な印象を受けます。

ここにあるのは、押し寄せる予見不可能な衝撃や感動、ではなく、豊富なサンプルに華やかなゲスト、強靭なビート、そして、下積みを疾うに経てすっかり勝者な主役二人の自信とスキルに満ちたラップが織り成す、飽くまで期待通りの安定したスリル。
ゴージャスに次ぐゴージャスでジャケまで金ぴかになってしまう事態。
滑稽なまでにセコさを排除したブルジョアな振る舞いで王座を不敵に眺める。

「俺等が組んでる時点でヤバいのは当然だろ?」という絶対的安心感だったり、或いは、「金掛けて優れたミュージックを生むってのはこういう事だぜ。」的な、荘厳さだとか作品への評価までも悠々と金と名声で平伏させてしまう、こうした自己顕示こそ本作で彼等がやりたかったことなのでは、とすら思ったり。

結果、そもそもヒップホップの新譜を購入する事自体久しぶりで、元来濃厚な味付けが好みな小生は、コアなヒップホップファンの方からしたらキッチュにすら思え兼ねない本作を高級な食材を次々と金掛けて調理した、偶のフルコースでも目の当たりにした様に、どこかでたじろぎながらも喜んで何度も腹に詰め込むのでありました。
こんなの食べちゃう俺まじリッチ。

寂しい、恋しい、会いたい、そんな口に合わないワックなビタースイーツはビッチの口にでも捩込んどけばいいのさ(キリッ・・・とか言ってる時点で俺はやはり裕福ではないが、だからこそこんなセレブリティーに憧れる。

the GazettE/TOXIC

TOXIC(初回生産限定盤)(DVD付)/the GazettE

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レーベル移籍後初の5thフルレンス。

メタルやらクラブサウンドやらを組み込みつつも、全体的に王道ダークヴィジュを邁進する様な作風だった前作から一転、今回も相変わらず、エレクトロもヘビィネスも貪欲に吸収しながらも、これまでのちぐはぐな雰囲気はかなり払拭され、吐き出し方が益々洗練されてきた様だ。
結果、受ける印象がヴィジュアル系の枠を越え、より多勢にアプローチ出来そうなラウド/ミクスチャーミュージックとして堂に入った佇まいをしている、という。

正直、「VENOMOUS SPIDER’S WEB」「VORTEX」等でのテクノ要素の取り入れかたは何処か小手先の業っぽく思えるし、「RUTHLESS DEED」「PSYCHOPATH」等のダーク/デスな表現方法にしても例えば先人『DIR EN GREY』程の禍禍しさや直情的な狂気には及ばなく、やはり何処か理性が伴った器用さを感じ取れてしまう。
ただ、このバンドの場合それで良いのだ!、と私は思う。

以前、ボーカルのルキは「憧れの先輩と同じ事をしても意味がない。それをした事で勝ち目がないのは分かっているから。」という旨の発言を雑誌でしていた。
だから、彼等は自分達がやりたい事であったり、好きであったりする他所の様々な魅力を飲み込み、飽くまで独自の味としてアウトプットする。その術が作品を重ねる毎に巧みになり、ようやく一つの到達点に達したのが本作ではないだろうか。

ファストな勢いと鋭く響く演奏でストレートにポップネスを鳴らしたパンキッシュナンバー「SLUDGY CULT」、ヘヴィーな音像が渦巻くデスシャッフル「MY DEVIL ON THE BED」、アグレッシブな展開を取り持つ中盤の叙情的なバラード二連発「UNTITLED」「PLEDGE」等、ハードコアなスタンスに思えつつ、今回はどの曲にもこのバンドの持ち味であるメロディアスで明快なフックが効いているのだ。

また実質的なラストナンバー「TOMORROW NEVER DIES」のメッセージにも注目するべきだろう。
『NIL』以降の彼等の作品は何れも、失望や悲哀の漂うミディアムバラードで締められる事が常だったが、今回は軽快なエモロックでそのタイトルからして象徴的な、何時になくポジティブなメッセージを掲げている。

「Don't kill yourself」

徒に死や悲劇を歌うのではない、苦境を乗り越え必死に前を向く姿が今のthe GazettEを体現している様ではないか。

適度なコアさとセルアウト臭、「上手い」と「美味い」が良い感じに調和してきた刺激的な音の一打一打が爽快に胸を打つthe GazettE初の核心盤!

「聞こえているかい?」
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