会社を出ると
肩に まつげに
そっと
降りてくる気配
メゾピアノではじまる
静かな 雨 のプロローグ
ウィンドブレーカのフードを被り
細やかなイントロと戯れながら
駅へ
家路を急ごう
電車を降りると
先ほどの雨
先回りしてお出迎えだね
出過ぎず
ここちよい加減を
万事 よく心得た
有能な執事のように
うやうやしく
おごそかに
さぁさぁと
さぁさぁと
ほどよい加減で
静かなる歓迎の演出
いよいよ
本編がはじまったみたい
★
そうだ
その先の雑貨屋で
赤い傘 を手に入れよう
まぁるく開くと
赤に小さな白いドットが弾む
握りしめると
ほっそりした 赤い革張りの柄
赤い赤い
きれい色の傘 は
クロゼットの奥の
少女のこころ
秘めやかに掘り起こす
ぽんぽんぽん
ぽんぽんぽん
新しくおろした少女のこころ が
小気味よく雨粒はじく
ぽんぽんぽん
てくてくてく
わたしは歩く
久しぶりに引っ張り出した
少女のこころ 片手に
ぽんぽんぽん
てくてくてく
わたしは歩く
まぁるく咲いた 少女のこころ で
雨粒 弾ませながら
ぽん ・ ぽぽん
フン ・ フフン
わたしは歩く
弾む水滴と
軽やかにハモりながら
★
歩く 歩く
私は 歩く
歓迎の雨 の
雨の歩幅で
歩く 歩く
私は 歩く
歩く 歩く
ぐんぐん歩く・・・
祝福の雨 の
雨の歩幅で
さぁさぁ
さぁさぁと
雨 が降る
さぁさぁ
さぁさぁと
5月の雨 が降る
今宵
5月の雨 が降る
私の歩幅で
雨 が降る
歩く 歩く
私は 歩く
かろやかに
弾むよに
歩く 歩く
私は 歩く
歩く 歩く
ぐんぐん歩く
さぁさぁ
さぁさぁと
雨 が 私と一緒に歩く
さぁさぁ
さぁさぁ
雨 と共に
私は歩く
私は歩く
ぐんぐん歩く
トクトクと
まぁるく咲いた
傘の中
鼓動 が きこえる
雨音 と 重なる
鼓動 が
雨音 が
弾む波動が
呼応する
5月 が降る
私と歩く
同じリズムで
ぐんぐん歩く
★
やがて
少し先に
家が見えてくる
祝福の雨 は
ふと
足を緩める
“ ここまでよ ”
え
そっか
ありがとう
一緒に歩けて
たのしかった
きもちよかった
ねぇ
とてもきもちよかったよ
さっきの私は
自然の一部だった
わたし
わかったよ
とても
きもちがいいね
ありがとう
5月の雨
いまここの自然 と
一体になれたひととき
ささやかな
ゴージャスな
5月からのプレゼント
★
玄関で
再び
少女のこころ を開きながら
ふと
窓の外に視線を向ける
さっきより
少し明るく転調した雨音 が
フェイドアウトで
エピローグを閉じようとしている
まもなく 雨 は
空へ 帰るだろう
“ いま・この瞬間 というフレッシュさ ”
“ 自然の波動と一体になるここちよさ ”
なんてきもちよい
なんて素敵な贈り物
ここちよいひととき
ありがとう
かんしゃ
- output 2013/05/01 -