福島妄想透視小説*****7…肌赤の王様 | しま爺の平成夜話+野草生活日記

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太宰は満足げに帰っていった。
お邪魔虫の消えた管理塔に、また喧噪が戻ってくる。

あのおっさんのおかげで、また不具合箇所が増えていそうだ、との思いが一瞬吉岡の脳裏をよぎったが、多忙にその思いさえすぐに消えていった。


官邸に戻った太宰は、いくぶん紅潮していた。

分かった、分かったと一人ご満悦である。
中身は中学三年レベルの内容だが、これで避難計画が立てられると一人笑っている。
狂気迫る様だが、火病状態よりはいいか、と女房役の小田野は思った。

あの人には、原子炉担当大臣をやってもらおう。とにかく俺の邪魔はよして欲しい。

内政は、俺と海枝がみる。
外交は太野だ。

アメさんだけでなく、急に官邸に出入りし始めた中狂と反頓情報部の扱いは、あの人に任せるか。

また、使いものにならない防御服だのチェルネンコ理論による放射性物質の乳酸菌による除去とかいう詐欺に引っかかって、官房費を無駄遣いされるかも知れないが。

とにかく、邪魔はよして欲しい。
ファビョンは家に帰ってからしてくれ。
小田野は祈るような気持ちであった。

それは外交を任せられた太野も、同じ思いだった。

中一レベルの英語力しかない太宰は、太野にアメ情報部から直接太野あての電話が入ると、常に内容を聞き出した。
一種の嫉妬だが、太宰は俺がすべてを把握しなければならないと思っている。

北太平洋艦隊からの情報は誤魔化したが、一部は伝えなくてはならない。

その極秘事項さえ自慢げに話す太宰に、もうダメだ。
いずれ辞めてもらおうと、強く思った太野だった。