それはないだろうと言われた。しかし私は憶えている。
多分それは3歳になったばかりだ。
不幸を知らせる電報が届いた。
まだ家には電話がなかったから、たぶんとなりの電話を借りたのだろう。
タクシーを呼んだ。
電話してすぐに、タクシーが来た。あまりに早かった。
その車は、不幸のあった相手の家がよこしたものだった。
そうこうするうちに、頼んだ車もやってきた。
結局、頼んだ車には500円を払って帰ってもらった。
当時の500円といったら、私にとっては膨大な金額であった。
金額まで覚えているのだから、相当貧しかったのだろう。
少し年上のおじさんに話したが、信じてはもらえなかった。
年上のおじさんでさえ、ほとんど覚えてない事だったからである。