昨夜のことだった。
10時くらいだろう。
深夜にはザーザー降り始めた氷雨が、まだしとしとという程度の頃だった。
その男は、その氷雨の中で傘もささずに玄関先に立っていた。
いや正確には、玄関先と言うより雨の当たる道路縁である。
三十路から不惑ぐらいだろう。
作業服を着たままだったから、会社から帰ったところだったのかもしれえない。
私だけでなく、まばらに道を行く人たちが、彼の前を通り過ぎてしばらくして、男の方を振り返る。
締め出しでも食らったのだろうか。
それとも家人が外に出ており、本人は鍵を忘れてしまったのだろうか。
それにしては不思議な光景fだった。
宿題を忘れて廊下に立たされていた、小学生時代を思い出した。
あれはなんだったのだろう。
風邪でも引いたのではないだろうか。
全くの他人のことながら、今なお気になっている。
まあ、人のことを言えない自分ではあるが。