【こんにゃく物語】ねとうよ | しま爺の平成夜話+野草生活日記

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いまはこんにゃく
これもちんなぢが僧の話なり
ひねもすよもすがら寺のさうじに明け暮れし僧あり よはひ長大なるも境内より外の世界を知らず
堂にはあずまの国よりつくしまで あまた人どもおとなひて おほなるこへにてさはぐ

僧の漢書のみならず天竺ことはさへ知りつるも あづまびとどものさはぎたる ねとうよなるは知らじ

よく聞けば 播磨、土佐のものどももまた ねとうよねとうよとなむさはぎける
はて ねとうよなるはいかなるくひものにや
われ知らねどもかやうにさはぎたるは いとよきいひにさぶらはんとおぼへし
僧のきはめて知識おほかりしとなむ言はれければ たやすう友なる僧にもきけずになりにけり

さばかりありて なにがしの守の従五位なるがおとなふあり
従五位は僧のつついつつよりのしりあひにて こころくるしうなきあひだなればねとうよのいかに美味きかをききはべる。

従五位の笑ひて 僧のくひたきねとうよ あまたやういせむ とく来よといふ
僧のはぢめて境内より出でし

従五位の出で立ちならず げらうのあまたけばけばしきがうんかの如くありて ぶわんどん ぶわんどん とばくちくなるをならしたる
そのけぶり喉に痛し

これなるがねとうよぞと従五位のいふやう

いさ このけぶりなるをねとうよといふや
いとあやしけわひにて僧の喉のいと痛くなりつる

つば飲み込むさへあたはず


それより後 僧のねとうよなるくひものは きらひになりたるとぞ語り伝へける