なんやうにしやむなる国あり。
いにしへにはとよくにあきつしまからも山田なにがしのあゆたやなるに行きておとどになりたるとなむ語り伝へける。
いかさま、かの地にはにつぽんなる姓のいまなほ多き。
こぞのことなり。
しやむにて空出多ぞ起きつる。しやむにてはむとせななとせに一度はかならずありしことなり。
これはまつりごとするまつりびとのこがねしろがねあまた懐に入りたるためのみにはあらず。
しやむには身のたかきひくきありて、そのちやうぢやうにきはめてやんごとなきがあり奉り侍りさぶらふ。
身のたかきはしやむなれど、こがねしろがねをあまたもちたるはしやむにはあらず。北よりいでしちやうごくなるくわんじんが、おほかたのお大尽なり。
さて、しやむにくわんじんのふたつみつすゑなるとわくしんなるをのこあり。
こがねしろがねのあまたもちたるからにやあらむ。きはめてやんごとなきに近づかむとほつするけさうあり。
しやむのたかきもひくきも、きはめてやんごとなきには神になむあり侍りさぶらひければ、 かくあるはいとゆゆしきことなり。
とがの多きをとはれとつくにに逃げたるぞ。
その弟にいんらくなる女あり。これもまたおとどになりしが、いつそうこがねしろがねを裳裾したに入れたるに、きはめてやんごとなきのいとたかきとうやまひたる民よりのくじやうあまた、さうざうしくなりぬ。
くるんてゑぷなる都のみならずしやむすべてさうざうしくなりぬ。
ここに、空出多こそ起こりけれ。
めりけんなどの、口よりあは出して、あし、あしとなむ言ひける。
されど、しやむのひとどもこころ安ろうなりて、かほにも笑みなどのこぼれたり。
とよくにあきつしまにては、空出多はあるあたはざるきはめて忌みしことなれど、しやむにてはさにあらず。
単に空出多なる言葉のみにてさはぐは、いと浅はかなり。
その身を知らずして瓦版電視の言ふのみを信ずるは、いとうましかなるぞ。