
先の記事に関して、獅子身中の【虫】が話題になった。
そこで、よく知られる故事を思い出したので、簡単にまとめてみよう。
参考文献は、陳舜臣 小説十八史略(講談社)である。
ユーラシア大陸の東には、中華人民共和国という生まれたばかりの国があるが、この一部に紀元前17世紀頃まで、夏という王朝があったとされている。
この夏王朝を滅ぼしたのが、殷という国だ。
殷王朝は商王朝ともいわれ、紂王を最後に紀元前1046年まで続いたとされる。
現在の日本語には商人という言葉があるが、実はこれは商の人という差別語だった。国を滅ぼされた商の人たちは、新たな周王朝の役人など主要な職につけないため、各地を行商して生計を立てていた。このため、主要な職につけない奴ら、最近の言葉で言うなら“商の負け組”とか言う名称に近いのてある。
さて、この殷(商)には、漢人歴史上最も凶悪とされる王と、西施、楊貴妃などと同様、漢史上ベスト5に入る美女が登場する。
商のラストエンペラーは紂王(ちゅうおう)。美女の名は妲己(だっき)という。
妲己については、非常に面白い伝説がある。
というのは、妲己は生まれる前から、反政府勢力によって商王朝を倒す武器なるべく育てあげられたというものだ。
この生まれる前からの計画というのがなかなか面白いが、長くなるから割愛する。 簡単にいうと、超美人の子どもを生まれる前から予約し、生まれた赤ん坊に対して【くの一】英才教育を施し、ごく自然に紂王に献上したというものだ。
ただし、くの一の妲己には、反政府勢力の最終兵器であることは教えていない。 武器という意識があると不自然さが生まれることを憂慮した教育係が、一切本人に教えることなく、無意識のうちに武器となる教育をしていたからだ。
結果的に最終兵器たる妲己は紂王を堕落させ、予定通り民意を失った商王朝は、周にうちとられ数百年続いた王朝は幕を閉じる。
ただし、いわゆる中華思想からすれば、これは民意を失ったことではなく、天命ということになるだろう。
池に酒を満たし、裸の女を林よろしく並べ立て、ひねもす夜もすがら肉欲ざんまい。
酒池肉林は、妲己が紂王に耳打ちして始まったとされる。
また、狼少年という言葉は西洋の寓話から導き出されるが、その寓話の原型はこの商王朝滅亡の故事を参考にしたものだろう。
商王朝があっという間に滅びたのは、妲己が狼少年状態を作ったため、いざ敵兵が来ても、味方兵はまたかいなと、誰も信じなかったからだ。
とにかく、漢の計画は昔から長い年月は問題としていない。
しかし、さすがに現在のような形式の中華人民共和国王朝ができるとは、たぶん予想していなかったのではなかろうか。
私は中華人民共和国70年の歴史という捉え方をするが、公共放送や義務教育では中国4000年とか、中国5000年とかいうようだ。
どういう計算をしたならそうなるのか理解できなかったが、昨日あるブロガーさんの記事で理解ができた。
もちろん、全く納得はできないが。
たぶん、それを書いたブロガーさんも、納得はしていないだろう。