海を越えて | N e w  Y o r k B l o w -NYでもタコ焼きを焼く英国人へ-

海を越えて

来日して暫く経ったが、イングランドから小包が届いた。
誰?と思っても送り主は相方父・母しか思われる人は居ないのだが、
取り敢えず送り主を確認すると、矢張り相方父・母だった。
何を態々日本に届けてくれたんだろう?と思いながら、
茶色のハトロン紙を切って開けた。



USポストよりマシな、ロイヤル・メールで到着。ま、眼クソ、鼻クソとも言う。


包みを開けると、25cm角弱の段ボール箱が出て来た。
段ボールにはそのまま出そうと思ったのか、
丁寧に日本の住所が書かれてあった。
段ボールにはビニールテープで封がしてあったので、
それをカッターで切り、箱を漸く開けた。

フラップの部分を開けたら眼に入ってきたのは、
外国版のブタプチ(豚鼻の様にでかいプチプチのシートの事)。
取り出してくるくると回して浅香光代の手紙みたいに、
しゅるしゅると広げてみると中から出てきたのは...



いつものセインズベリーの青い袋に、いつもの包み方...




















ショートブレッド!





























しかも、
2枚!


























オーヴン・シートでいつも包んで、水分が抜けない様に送ってくれる。


























嬉しいぃっ!
バリ嬉しい!

























相方母手製のショートブレッド初体験の時、正直、倒れたよ。
んで、ずっとコレを食べていた相方を、心底うまらやしがったよ!
相方母のは中がしっとりしていて、 食べる毎にほろほろと崩れて溶ける感じで、
まるで次郎の寿司みたいに舌で解ける感触。
今まで食べてたカチコチのウォーカーズのとかと全く違い、優しい味。
オーヴンであっためて食べると一層美味しい!




























うにょぉぉっ!
旨そぉぉぉっ!






箱に眼を戻すと封筒と、何か印刷物が有った。
印刷物と思ったものはよく見ればティー・タオルという、
日本で言うところの布巾。皿を拭いたり茶碗を拭いたりするヤツ。
地元リヴァプールの名所・旧跡を写真化して印刷したものだった。

相方実家では未だにチャールズ皇太子結婚時に、
発売された記念ティー・タオルを使っていて、
物持ちのいいイギリス人家庭らしく、
少し印刷の色の剥げて来たダイアナ妃の笑顔が、
毎回食事の後の洗い物を手伝う私に微笑んでいたのを思い出した。



これが一緒に送られたリヴァプール市の、名所・旧跡案内ティー・タオル。


封筒にはカードが入ってあり、漸く読み慣れた相方母の文字が躍っていた。
実は日本に行く前に、
相方のセーターを編んだ時に余った毛糸の使い道を考えた結果、
イングランドはもう寒いだろうと思い、
一番簡単なメリヤス編みを20目毎に裏・表と編み替えて、
約1.3mX1.0m大の1枚の膝掛けを編んで送った。

いつもリヴィングで本を読みながら午後の空き時間を、
暖炉の傍で過ごす相方父・母。
膝掛けがあればもうちょっと暖かいのにと行く度にいつも思ったので、
どうせ今の所何も作る予定は無いし、(ってか作る気無かった)
長く置いていたら虫に喰われるだろうしと思い、
ただ置いていても場所も取るし仕方ないから仕事の合間や、
相方の居ない夜の空いた時間や、煮込み料理を作りながら、
「恋人に贈る為の必死さの怨念」は込めずに編んだ。
(逆に込めてたら、めっちゃ怖い)

今迄セーターも3-4枚、その他小物を色々編んだけど、
しょっちゅう編んでる訳じゃないから、
網目が揃わない事も多々有って、後で手直ししまくりの駄作。
暫くしてそれが届いたと連絡貰って「もう使ってるよ」と言われ、
「網み目はじっくり見ないで下さい」とお願いしておいた位。

下手だけど使ってくれると嬉しいと言うと、
相方母は「大丈夫よ、綺麗に編めてる!」と、
既にじっくり見られた後だと知って、汗かいた。(マジ)
ま、ヘタレなりのヘタレ・ワークなので、そこは許して貰った。
こういう時程、「広瀬光治になりてーっ!」と思う事は無い。
思っても、なれる訳じゃないけど...。(T_T)

カードには改めて膝掛けの礼と伯母についてのお悔やみが書かれており、
親戚みんなと遺品整理をしてるだろうから、
今更だと思うけどその合間のお茶の時間に温かいお茶を淹れて、
ショートブレッドを摘みながら伯母さんの思い出話をしなさいと、
短く書かれて有った。

血縁でも無い人にこんな事を言って貰えるなんて、
今迄思っても見なかったから、驚くと同時にとても嬉しかった。
それに態々イングランドから日本くんだりまで私の大好きな、
相方母手製のショートブレッドを送ってくれるなんて、
予想外もいいとこ。

改めてイングランドの相方母の思い遣りに、
心から涙した小包だった。



親戚皆と、伯母の話をし乍ら紅茶と頂いた。