太陽と月に背いて ~無傷な魂がどこにある?~

太陽と月に背いて ~無傷な魂がどこにある?~

Poetical Works of Blue ~Blueの詩集~

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                    渇き


-アン・カフェ

-(一杯の珈琲)



コインを渡す



-モン・カフェ

-(私の珈琲)



喉へ送る



-モア・メーム

-(私自身)



癒しは


渇き

                    はちみつとキーボード


なにやらベタベトしてる?ベトベタ?
キーボードの上で
口からはちみつがこぼれたんだって
キーをはずして洗うんだって
洗ってもとに戻るのだろうか・・・
たとえば
”L”のところに”D”を入れちゃうと
LOVEはDOVEになって飛んでいく
イインジャナイ?
GODはDOGになって月に吠える
イインジャナイ?
MADはSADになってナイフを捨てる
イインジャナイ?
キーボードの上ではちみつを食べるって
イインジャナイ?
世界が変わるよ
PAPAはMAMAになるんだよ
イインジャナイ?
はちみつを洗うと
世界は
もとに戻らなくなるかもよ
泣かないで
いやいや泣けなくなるんだよ
TEARはPEAR
涙はヨウナシになるんだもの
なにやらベタベトしてる?ベトベタ?
キーボードの上ではちみつを食べた人がいる
キーをはずして洗うんだって
洗うと
世界は変わるかもよ
ヨウナシのつもりが
飲み込んだのは
涙だったりして・・・
イインジャナイ?

                    そういえば


そういえば
君はもういないんだね?

水が平地をゆるやかに流れていく
どっちが上流なんだろう?

夜に月が
僕の頬を青く焼くんだよ

夜が明けても
青は青

水が平地をゆるやかに流れていく
右からも左からも

刺されちゃったのかな?
刺しちゃったのかな?

そんなのわからないよ
月明かりは矢印じゃないって言っただろ?

そういえば
君はもういないんだよね?

夜に月は人の頬を青く焼き
水は平地をゆるやかに流れていく

右から右へ
左から左へ

                    目にしみるコラージュ


「レジスタンス」って言うと「玉ねぎ」って言う女の子がいる
ホントにいるんだよ
ホームランバーが好きな女の子で
最近はもっぱらワンピースを着ているらしい
「玉ねぎ」って聞いても「レジスタンス」を思い浮かべるのだろうか

彼女は
帽子が好きで日傘が好きでストールが好きでマフラーが好きでベルトが好きでピアスが好きでネックレスが好きで香水が好きな女の子で
裁縫と綺麗な下着と読書と喋るのと真っ暗が好きな女の子でもある

僕は川べりの土手で背の高い痩せた老詩人と並んで座り
ミドリ色のボトルに入った白ワインを飲んだことがある
彼はワンピースではなくグレイの背広を着ていた
-僕は20歳になるまで日本語ではモノを考えなかったよ・・・
-遠いもの同士の結びつきが詩だよ
-詩とは新しい関係の発見だよ

「レジスタンス」と「玉ねぎ」は詩だ
新しい関係の発見だよ

彼女は
正統派綺麗系きちんとめな着こなしが好みで
ヤフオクもお薬110番もAmazonでウィンドウショッピングも3分クッキングもフォートナム・メイソンもアニエスbボヤージュもスワロフスキーもOPIもLUSHもクリネックスのティッシュも好み
こんなに多くの好みを知っているのに僕は彼女を特定できない
僕は彼女のもっとも遠くにいる

千とひとりのワンピースを着てホームランバーを舐めている女の子たちとすれ違いながら僕は聞くだろう
帽子が好きで日傘が好きでストールが好きでマフラーと・・・が好きなひとぉ~?
裁縫と綺麗な下着と読書と・・・が好きなひとぉ~?
正統派綺麗系きちんとめな着こなしが好みなひとぉ~?
ヤフオクもお薬110番もAmazonでウィンドウショッピングも好みなひとぉ~?

帽子より日傘よりヤフオクよりLUSHより僕は彼女から遠くにいる
この遠さは
僕らの関係が一篇の詩であるという可能性を高めはしないか

「レジスタンス!」
と僕は叫ぶ
千とひとりの女の子のなかで
ひとりだけ答えるはずだ
「玉ねぎ!」

目にしみるね

                    シュガー


秋の夕方なんだろうけど

夏の夕方がいいな


もっともキライな時刻

夕方の五時から七時の間がいいな

できれば日曜日


僕は木造のシンプルな小屋にいる

ベッドがひとつと本棚がひとつと机と椅子

机の上には白い紙と万年筆


小さなタンスくらいはあってもいいね

ぜんぶ木製がいいんだ


その小屋は丘の上がいいね

うねうねの一本の小道だけが

その小屋に辿り着ける道


僕はね

ベッドに横になっていると思うんだ

その夏のある日曜日の五時から七時の間


そのときがね

闘っているかどうかはわからないけれど

僕のジンセイ最後のトキ


僕は思っているわけ

子供のころから変わらず

やっぱり僕は日曜日の五時から七時の間が

キライなんだなあって…


するとさあ

そこは丘の上なんでトツゼン

トツゼンひとりの年老いた女が現れるわけ

うねうねの小道にね


だから丘の上がいいっていったの

こうやって突然のサプライズがあるからね

とつぜん見えるものはすべてエピファニー

啓示のように思えるよね


彼女はうねうねと歩いて近づいてくるわけ

たった一本の道を


僕はベッドに横になって窓から見ているわけ

ジンセイ最後のトキを待ちながらね


夏でよかったなあ

と僕は思っているだろうね

陽はまだ沈まず

彼女がやってくるのが見えるからね


彼女は小屋に辿り着き

部屋に入ってくるわけ

自分の家のようにね

自分の家のようだからとうぜん

なにもしゃべらないわけ


部屋に入ってくると彼女は

一輪の真っ赤な花をさした花瓶を

簡素な木の机の上におくわけ

なにも言わず


そして

なにも言わないまま出ていくわけ

その夏のある日曜日の五時から七時の間


彼女はかって若くとても美しかった

いまは年老いたけれどね あい変わらず

僕にはとっても素敵に見えるわけ

古代ギリシャの彫像のようにね

でももう僕の声は出ないわけ


彼女が出て行ったあと

窓は見ないわけ

机の上の真っ赤な花を見つめているだけ…


彼女がかって僕のことを

シュガー

と呼んでくれたことを思い出しながらね