昨日私は幾度も、ドアが閉まっているかどうかを確かめた。それから、自分の眠気を誘うべく、きみのことを考えようとしたのだが、きみは捉えどころのない、ひとつの灰色のイメージでしかなくて、その点、他のもろもろの想い出と同じことだった。まもなく、考えるべき対象が私の中で尽きてしまい、考えたくないものしか残っていなかった。私は泣けるものなら少し泣きたかったのだが、そうはできなかった。泣く理由など私にはいっさいなかったから。『昨日』(P24) アゴタ・クリストフ著 堀茂樹訳 早川書房