(第1回はこちら

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お見舞いには、ちょくちょく顔を出した。


ただ、病気のことについては

彼から何も話してこなかったので、自分からも

何も聞かなかった。

お互い、暗黙の了解かのように。


その代わりとは言ってはなんだけど

いつも

仕事の話ばかりしてた。


あれはどうなったとか

こんなんどう思う?とか。


とても病院でするような会話じゃなかったけど

あいつ、仕事の話をしているときが

いちばん

嬉しそうな顔してた。


そして

手術から5ヶ月後の、とある日。


てんもうさん。退院日が決まりました!


って、彼から電話が掛かってきた。

嬉しそうな声で。

よしそれなら晩メシでも行こうぜ!ってことになり

退院後すぐに会うことになった。


約束当日。


あいつ、すこし不自由になった左足を引きずり

向こうからヨチヨチ歩いてきた。

嬉しかった。

最初にかけた言葉はこう。


お互い、よく生き延びたなぁ~


って。


と言うのも

実は、会社のほうも相当危険な状態だった。

だってそう。

開発のすべてを仕切っていた彼を、突然失った。

=あらゆる案件が止まる

=お金が入らない。


正直、彼の入院後の3ヶ月間。

今だから言えるけど

ほんと、いつ倒産してもおかしくない状況だった。


とりあえず、先のことはいい。

今日を生き延びよう。

そう思って、毎日過ごしてた。

いま思い返しても、ほんとよく生き延びれたなぁ

って思う。


それはさておき。


食事中は、お互い相変わらず病気のことついては

話さなかった。

で、食事も終わり、すこし落ち着いたころ。

彼から、突然こう切り出された。


てんもうさん。

すみません・・・・

悪性でした。

3年間生きれる可能性は、3%以下みたいです。

・・・

・・・


あいつ、ぜんぶ知ってた。

自分の病気がどういうものなのか。

そして、残された時間がどれだけかってことも。


これを聞いて、言葉を失っていると

続けてこう言ってきた。


この先、

どれだけ時間があるか分からないですけど

仕事がしたいです。

ブレインが好きなんです。

てんもうさんと、一緒に仕事がしたいです。

お願いします。


って。


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