
ハイエンドばかりに、話題が行きがちな自転車専門誌。
エントリーモデルを紹介するものの、
子供だましの解説しかつかないライフスタイル系一般誌。
そんな巷の情報誌では語られることの少ない、
可哀想なエントリーモデルにこそ、
実は、本来語られるべきブランドの個性が
色濃く宿るものだと僕は思っている。
エントリーモデルは、素材の質や、製作工程、仕上げなど
多くの妥協をしなくてはならない。
だから完成品には、最後まで妥協しなかった部分、
つまり“ブランドのこだわり”がちゃんと残ってしまうものなのだ。
(こだわりを持っているブランドならば)
FP UNOを送り出したピナレロのこだわりとは「アシンメトリー」である。
アシンメトリーはもともと構造上、左右非対称という宿命を持つ自転車の、
動力伝達の非効率さを改善すべく発案されたフレーム構造である。
技術のトップダウンが早い最近のピナレロを知っている人は、
“ボトムエンド-FP UNO"のアシンメトリー化というニュースに、
もはや驚かないかもしれないが、
アルミフレームをわざわざハイドロフォーミング成形で
アシンメトリー化させるこだわりには、正直驚いた。
(FP DUEはフォークとシートステーのみのアシンメトリーだが、
FP UNOは正真正銘フルアシンメトリーなのである。)
ピナレロはまだアルミにもこだわっているのか、
価格帯的にアルミにするしかなかっただけか定かではないが、
少なくとも、ピナレロが問題視している、
“自転車の非効率さを改善する”という想いが、ボトムエンドのモデルにも
込められているのは、素晴らしい!
あまり話題をさらうことのない“エントリーモデル”なのに...
そして...その恩恵を得ることが少ない、感じない、
または必要がないターゲットなのに、
手を抜いた製品を提供しないあたりがピナレロのかっこよさだ。
実際、FP UNOを買うユーザーが、アシンメトリーの恩恵を
実感できるかどうかは分からない。
というより...実感できるはずもないだろう。
それは、ヘッドパーツの大口径化と同様、このクラスのロードバイクを
必要とする人にとって、実は全くどうでもいいスペックなのだ。
でも価値がないわけではない。
プロ用機材、DOGMA 2にも通ずる“ピナレロのこだわり”とともに
走れること。それがユーザーの気持ちを大いに満たし、
「もしかしたら俺、このピナレロで速く走れるようになってきたかも?」
と思えるようになるのだ。
そしてそれが入門バイクとして最も大切な「価値」だと思う。
価格を追求するあまり、こだわりを失った、
見かけ倒しのエントリーモデルはいくらでもある。
そんな自転車を買おうとしている友人がいたら、きっと僕は、
「FP UNOはどう?」って勧めるだろう。