百目鬼×四月一日
含まれる要素
BL 切甘
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「最近は少し忙しいみたいだね」
「ええ、まあ…少し」
「きちんと休んでいるかい?
「それなりには休んでますよ」
店の縁側に二人の影が並んでいる
庭に咲いた季節外れの桜は月の光を浴び
夜の闇に浮かび上がっていた
「本当に?寝不足の様にみえるけれど」
落ち着いた声の主は、諭すようにそう言って
微かに俯いた四月一日の顔を遠くから覗き込む
「…嘘はついていませんよ、本当に休んでます。…只、最近少し寝付けなくて」
顔を上げ困ったように笑みを浮かべた四月一日の言葉に
遙は薄く笑みを浮かべた
「話せるようなら…聞かせてくれるかな」
その言葉に四月一日は静かに目を伏せた
「…怖くて
この日常に終わりが来るんじゃないかって。…勿論、いつか終わりが来ることは分かってますけど。
眠って、目が覚めたら…モコナも…マルもモロも…百目鬼も、皆消えてしまっているかもしれないって」
ぽつりぽつりと小さく呟くように言葉を紡ぐ
「…侑子さんの時も、突然だったんです。…本当に突然…何の変哲もない、普通の日だったのに」
そこまで言った時、柔らかい感触を身体に感じて目を覚ました
凭れ掛かっていた縁側の柱の硬い感触と、肩に掛けられた上着の感触
ふと隣へ視線を移すと百目鬼の姿があった
「また眠れていないのか」
「そんなことねえよ」
不服そうに答えた四月一日に、百目鬼からの視線が浴びせられる
「…何…」
何だと問いかけようとした瞬間に頬へと触れられ
言葉を遮るように唇を塞がれた
『この日常に終わりが来るんじゃないかって』
先程の夢の中での言葉がフラッシュバックする
自分で言った言葉の筈なのに、胸が締め付けられる
『目が覚めたら…モコナも…マルもモロも…百目鬼も
皆消えてしまっているかもしれないって』
……
パシッ..
気付いた時には乾いた音を立てて百目鬼の手を払っていた
驚いたように此方を見つめる相手の表情に罪悪感を感じ、
立ち上がった
「……泊まっていくなら風呂入って客間行け」
背を向け部屋へと戻った
そんな事があってから数日
あの日は結局泊まらずに帰ったようで、それからというもの
連絡も無く姿も見ていない
忙しいのか、あるいは………
宝物庫の中をぐるりと見回し、昨日来た客人への品物を
探しながら考えを巡らせる
「…愛想が尽きた、か。…そりゃあいきなり手を払われたら良い気はしねえよな」
何でもない事を装い、静かに呟き瞳を伏せる。
物音の無い空間と宝物庫独特の冷えた空気が肌を刺し、一層孤独感を煽った。
こんな思いをするくらいなら、初めから仲良くなんてならなきゃ良かったんだ
初めから好きになんてならなきゃ良かったんだ
「………嫌いだ」
心にもない言葉が口を突いて出る
それと同時に来客を知らせる鈴が鳴った
胸の奥、肺の辺りが冷え切っているような、妙な胸の痛みを覚えながら玄関へと向かった
何てことはない、少し「別れ」が早まっただけ。
そう自分に言い聞かせながら
