闇夜の月 ~The Moon In Darknight~ 

闇夜の月 ~The Moon In Darknight~ 

赤鋼(アカガネ)藍妃(ランヒ)と藍架(アイカ)による自作小説ブログ。

藍妃が書く短編と、藍架の書く中編を載せていきます。

こんにちは、そしてようこそ。

「闇夜の月  ~The Moon In The Darknight~」   へ!

頻繁には更新できませんが、様々なジャンルの中編小説を載せていきたいと思います★

中編の場合、ひとつの作品を5つ程度に分けて掲載します。

よろしくお願いします♪       (藍架)

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目を覚ますと、フラフラして仕方なかった。

「ん・・・ここ・・・は、ドコ・・・・・・?」

琴音は、江戸城とは似ても似つかない、質素な空間にいる。

 薄い布団から出ると、よろけて無様に転んでしまった。

 「いったぁ・・・もぉ~、何なの??」

 「起きたのか、琴」

 襖の開く音と一緒に入ってきたのは。

 「えっと・・・楓、でしたか・・・?」

 「そ。 当たりだ」

 そう言って優しく微笑んだ青年は、琴音の胸を高鳴らせる。

 長い黒い前髪に半ば隠された瞳は、秋の紅葉の様な朱色。

 自分と同じ髪の色なのに、自分と違う瞳の色。

 漆黒の瞳で朱色の瞳を見ていると、今までに感じたことのない満足と高揚と焦燥で胸が張り裂けそうだ。

 「・・・琴?・・・顔赤いぞ 熱でもあるのか?」

 そう言って無防備に近づいてくる楓に、琴音は慌てふためいた。

 「こっ・・・ここ来ないでくださいぃぃぃっ!!! しっ・・・ししかもっわわわ私は『琴』ではなくって!!!!ききき『琴音』と申しますっっ」

 口走って我に返った。名乗ってどーすんだ。

 けれど楓は笑ったりしないで、穏やかに受け止めてくれる。

 「そっか・・・琴音、か。知らなかった・・・これからそう呼んでいい?」

 そう言って、また微笑んだ楓に、琴音は既に愛しさを抱いていた。

 「―――――っはい!!!・・・よろしくね、楓」

 

 

 その夜、褥にて事件が起こる。

 「上様・・・お待ちしておりました・・・」

 「面を上げよ、琴。・・・もっと近う・・・・・・」

 「・・・・・・はい・・・・・・」

 いつものやりとりの後、家敬は琴音を抱き締め、口接ける・・・

 つもりだった。

 だが、琴音の背後に振り上げられた何かに気付き、動きを止めた。

 「何奴だ? ・・・琴に何の用だ?」

 すると闇は、振り上げた何かを下ろし、冷えた声で言った。

 「貴様の大事な大事な 『琴』 を殺すよう命ぜられた」

 「忍か・・・? 名は何と言う」

 家敬の、将軍たる威厳に満ちた問いに、闇は答える。

 「そう、忍。軽々しく名を言うのは好ましくないが・・・まぁ良い。 俺は楓、と言う」

 「ほぅ・・・楓、か。誰の差し金だ」

 「尚子様でしょう?貴方に命じたのは」

 急に口を挟んだ琴音は、哀しそうに言った。

 「フ・・・馬鹿では無いようだな、貴様の大事な琴君は」

 すると、先刻の何か―名刀「朱雀」―の柄を逆さに持ち、そこで琴音の華奢な首筋を強打する。

 「――琴っ!!」

 「その者、貰い受けさせてもらおうか」

 意外な発言に、家敬はたじろぐ。

 「なっ・・・!何を申す!?」

 「ふぅん・・・じゃ、選べ。琴を俺に引き渡すか、江戸城全体で心中するか。どちらを選ぶ?」

 あくまで冷静な楓は、何気なく重大なことを言う。

 数分後、江戸城の屋根瓦から素早く飛躍し、闇に紛れた楓の腕には、眠るように瞳を閉じたままの琴音の姿があった。

 琴音は、攫われて行った・・・・・・。

雪が降る日

告げた。

幼馴染の

アイツに。

そしたら

笑った。

                                                      雪が降る日

                                                      呼び出された。

                                                      そしたら

                                                      「好きだ」と

                                                      小さな声で

                                                      告げられた。

胸が

締め付けられた。

                                                      心が

                                                      弾んだ

「わたしも」という

返事を聞いた。

                                                      この気持ちを

                                                      告げた。

嬉しくて

抱きしめた。

                                                      抱きしめられて

                                                      キスをした。

                     願わくば、

                     もう少しだけ、

                     雪を降らせて。

                     

                     一生の願い・・・・・                   

妙原 琴音(たえはら きんね)、16歳。

 職業は、この広き日本を治める将軍の側室。

 この悲恋の、主人公である。

        ★

 雅な舞の観客から、雅な笑い声が聞こえる。

 江戸城は今、やっと登り切った日の下で宴を催している。

 十六代将軍・家敬(いえひろ)は、傍らに「お琴(こと)の方―ここでの琴音の名だ―」を携え、ひときわ大きな笑い声を上げている。

 それを、さも面白くなさそうに見ているのは、大奥の上位の者たち。

 特に御台所の尚子などは、嫌悪で美貌に亀裂が入ったようにさえ見えた。

 その凍るような視線を見ると、琴音は家敬に更に近づいて甘えた。

 自らの愛らしさを、最大の武器にして。

 「上様、今宵はどちらで過ごされますの・・・?私の処へは、おいでになって下さいませんの・・・?」

 すると家敬は、琴音の結い上げた髪の後れ毛ごと肩を抱いて、低く囁いた。

 「そなたの様な可愛い女子を、独りにはせぬ・・・」

 まぁ、と頬を染めると、潤んだ瞳で家敬を見、言う。

 「勿体無いお言葉・・・ですが、今宵も・・・・・・?」

 「あぁ、そのように申し伝えてある」

 その言葉に対し、眩い微笑を返す琴音。

 家敬の腕の中で見事に表情を変え、底意地の悪さが滲み出た嘲笑を、尚子に向ける。

  ――その嘲りこそが、全ての歯車を

        狂わせる、引き金となっていた――

 尚子が侍女を呼びつけ、扇子の向こうで何を言い付けたかなど、琴音は気にも留めなかった。

 (上様が御寵愛は、この琴音だけのもの・・・)

 これが琴音の短い人生で、最も輝かしい瞬間であった、と言い切ることが出来るだろう。

 この後は、愛しさと切なさとが交錯するのだから。