流石カズオ・イシグロ「忘れられた巨人」良いですね。「わたしを離さないで」でから10年余り、これも氏の代表作の一つになりそうです。

 

騎士や、竜、戦士、鬼などが登場して大人の童話のような話が進むのですが、その辺りは「わたしを離さないで」のミステリアスな進行と似て現実界とは一線を画しています。

 

読み進んで最終章へ向かうに従い、じわじわとやってくる情感に圧倒されますね。

 

今最も注目されるべき作家の一人と思います。ノーベル文学賞が、純粋に「最高の文学賞」という性格のものなら真に有力候補の一人と思います。

 

 

 

 

 

 

「金ではなく鉄として」 中坊 公平

                                   岩波書店

確か朝日新聞に連載されていたと思う。文章が平易で読みやすく、内容も面白く思って、時々読んでいましたが、本になっているのでまとめて読んでみました。

著者の言葉を借りれば、虚弱で運動神経も無く、成績も悪い劣等生が、弱気を助け強気を挫く弁護士中坊公平に成長する様が書かれています。

困った時には原点に返る。物事の本質を掴む。それは何処にあるのか?・・・答えは常に現場にある。その事を良く教えてくれる本です。

森永ヒ素ミルクの弁護団長を引き受けた時に、著者は疑問に憑かれる。「はるか18年前の出来事と、目の前の『被害者』の重い症状とは本当につながっているのか」弁護士としてあるまじき疑念に捉われた著者は被害者の家庭を一軒一軒訪問する。そしてそこに被害者、加害者「森永ヒ素ミルク事件」の闇に直面することになる。

読みやすい、面白い、勇気が出る 星★★★★★5つ