《不夜天の戦い》は、

白(藍忘機)と黒(魏無羨)の二人にとってまちがいなく最大の、

そしてたぶん最悪の、人生のターニングポイントだった

 

黒(魏無羨)が白(藍忘機)の前からいなくなり、

白(藍忘機)を16年もの間、絶望の淵にさまよわせている

もちろん黒(魏無羨)にとっても、

まだ20年も生きないうちに、一回目の人生をおわることになる

 

これからひょっとしたらいい関係になるかも、

ふたり一緒にあんなことやこんなこともできて、楽しいことがいっぱいあるかも、

希望に満ちた人生のあたらしいチャプターが始まるかも、というチャンスも逃す

じつに《残念》な事件

 

このことを思い出していて、2つ、わからないことがあった

  • そもそもなぜ、黒(魏無羨)は戦ったのか?
  • 黒(魏無羨)は追い詰められた時、なぜ 《崖からダイブ》 という、自死の道を選んだのか?

 

 

(出典:注1)

 

《陳情令》を最後まで見たら、黒(魏無羨)が戦って死んだ理由は、

金光瑶の仕組んだ超悪だくみプロットに

まんまとハマったからよ、ということになる

 

たしかに《不夜天の戦い》の始まった時点で、

黒(魏無羨)は金光瑶があんな悪いやつだとも、

自分をワナにかけて出世しまくろうという野望を持っているとも、

まったく思いつきもしない

 

だからといって、

各仙家が黒(魏無羨)を成敗しようと団結して決起した場所に

ノコノコと向かい、戦いを受けて立つほど間抜けではないだろう

 

(出典:注1)


というか、再生したあと名探偵になって謎解きで大活躍するように

すごく頭脳明晰で、論理思考な奴だ

だとしたら、なぜ一人、屋根の上で《陳情》(笛)もってカッコつけて皆を挑発したのか

 

自分が必死の思いで難民キャンプを作り、

保護してきた温家の残党が皆殺しにされて頭にきて、

腹にもすえかねて、リベンジに乗り込んだ、という可能性はある

でもリベンジだとしても、勝つ見込みはあったのだろうか?

 

周到に準備すれば、多勢に無勢でもリベンジは成功できるかもしれない

しかし、あの晩はそういう状況ではなかった

頭に血が上って、あとさき考えずに戦いを挑んだのか

千に一つの可能性に賭ける、カミカゼ特攻隊の気分?

 

ときどき宴会の席でも、その場の空気を読まずに正論をふっかけて

座を白けさせたりするぐらいだから、

カッとなってあとさき考えずに行動するというのはありかもしれない

 

でも自分の命がかかっている

それだけでなく、多くの相手を殺さなければいけない

そんな時に、あとさき考えずに行動するか?

 

すくなくとも黒(魏無羨)の思考回路を考えると、

あのような状況に追い込まれれば追い込まれるほど、

普通は冷静になって、なにをすればいいか、すべきでないか、考えていたのではないか

 

そうやって考えていたら、《不夜天の戦い》には、3つの違うフェーズがあったのかもと

思うようになった

  • 演説と説得
  • 緊張の糸の切断
  • 最後の思いやり


《世間が邪とする考えを広め、青少年をたぶらかそうとした》という罪に問われ、

ソクラテスは民衆裁判にかけられて、死刑を宣告される

そのときの法廷ドラマが 《ソクラテスの弁明》 だ

 

彼は、民衆が正しいと思っていることが本当に正しいのかどうか、

民衆がそれに基づいて行っていることがいいことなのかどうかを問う

自分たちがいかに真実を知らないかについて、

まず考え、知ることが必要ではないか、という《無知の知》を示して考えさせようとする

 

でも結局、民衆は自分たちの行動に微塵も疑いを持たず

ソクラテスへの死刑を宣告する

彼は、《いかに悪い法でも、法律は法律》 と言って判決を受け入れ、

毒盃を飲んで死ぬ

 

黒(魏無羨)が紀元前4世紀、ソクラテスになにがおこったかを知っていたとは思わない

しかし、原作《魔道祖師》の著者《墨香銅臭》は知っていて

それを再現したのではと思うほど、話がパラで進んでいて驚いた

 

黒(魏無羨)が不夜天に行ったのは、《演説》と《説得》のためでは?

各仙家から集まったエリート仙師達に対して、

その行動のベースに、ほんとうの正義があるのかどうかを問うている

 

黒(魏無羨)は屋上に上って演説を始めた

溫寧が誤って金子軒を殺してしまったことの非を認め、自白と贖罪に出向いたのに

温氏の残党を皆殺しにしてしまうことのどこに《正義》があるのかと

 

黒(魏無羨)はこの段階では、

ひょっとしたら自分にも分があると思っていたのだろう

少し前に 《藍氏の座学》 でともに学んだ仲間もたくさんいる

分かってくれるやつもいるのではないか

 

あるいは、その場で皆が自分になびくとまでは楽観視していなかったとしても

少なくとも、全面的に戦うというところまでは突き進まず、

謹慎処分は食らっても、議論に一石を一石を投じるぐらいはできるのではないか、

そのぐらいの犠牲は払ってもいいぜ、ぐらいのことを考えていたのでは

 

でも結局、いずれの希望も叶わない

黒(魏無羨)の考えに理解を示した昔の仲間がいたとしても、まだ若いし少人数だ

古くて頭の固い大人たちの考えに、まとまって対抗できるほどの力にはなっていない

選挙にせっせと行くのは年寄りばかりで、若者の投票率が低い現代と似ている

 

そうやってフェーズ1は、黒(魏無羨)の惨敗でおわってしまったのではないだろうか

まだ10代の若者だった黒(魏無羨)には、考えに詰めの甘いところがあったということか

その結果、仙師たちのマジョリティが求める死に向かって、まっしぐらに突き進む

 

そうでも考えないと、あの賢い黒(魏無羨)が負けのわかっていた戦に突き進み、

関係を深めていた白(藍忘機)に、そのあと16年もの間、

耐え難い苦しみを与えたようにしか見えない行動の理由がわからない

 

でも、死に至る黒(魏無羨)のあの晩の行動パターンは、

フェーズ1《演説と説得》の失敗だけでは説明できないと思う

フェーズ2《緊張の糸の切断》とフェーズ3《最後の思いやり》もある

それについては、《続く》です・・・汗

 

出典:

注1:Twitter "The Untamed Official" 

https://twitter.com/NSMG_TheUntamed