あの夏から12年。


真夏の日差しが映し出した彼らの幻影を追いかけて、生霊となってしまった僕は影踏みする。

声は届かず、もう決して交わることも、誰かと共有することもできない世界。 


皆大人になって、いつかは消えてなくなる。


それでも思い出の中の彼らが死んでしまわぬよう、自分だけでも抱きしめていたかった。

忘れ去られた土地で、草木が生い茂って朽ち果てたとしても、その記憶の扉で佇む最後の守り人のように。


でも背負いきれなかった。

心は今も近くにいるのに、ただ一人あの場所に取り残されている孤独に、今にも押し潰されそうだった。

溢れ出る涙が意味するのは「ずっと夢を見ていたい」という馬鹿げた憧れのみで、しかし時計の針が進み続けるこの世界では無情にもなんの価値もない。



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あの夏だけじゃない。 

10年前、5年前、3年前…

思い出はどんどん大きな雲となって、空を覆い尽くしていく。

肥大化した雲を地上からぼんやりと眺めるだけの僕を見て「なんてつまらない顔をするんだ」と、子供たちは後ろ指を指している。



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あの夏の子供にもう一度だけ近付きたくて、この3か月間、市内の劇団をしらみ潰しに探し回った。

自分が求めるものに一切の妥協をしたくなくて、炎天下の中歩き回った。


きっと演劇でなければダメな気がしていた。舞台というフィルムには残らない一度きりの時間、仲間たちと作品を作り上げる一体感。


もう一度君に会いたい。





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この呪いをこの先ずっと背負って生きていくのかもしれない。

一方で、一歩踏み出すことでこんなもんだったかと諦めが付くかもしれない。

その答えを探すために、大人になった今舞台に立つことを決めた。


いつからか未来なんてものは見ていない。

生霊となってしまった自分を成仏させることが本懐なのだと、あまりにも青過ぎた10代・20代を振り返り思う。