彼の車が視界に入ってくると
足取りは重くなった。
だいすきな彼に会える瞬間。
私達の関係はもうそんな関係じゃない。
ゆっくり彼の車に近づいた。
いつもなら走っていく彼のもとに
初めて歩いて行った。
助手席を開けて私は
久しぶりだね。元気にしてた?
彼は少し気まずさを残しながら
ああ、久しぶり。元気だよと言った。
私はそっか。良かった。
…助手席座っていいの?
後ろ座ろうか?
こんな会話いつも無かったのに。
彼が迎えに来てくれたら
当たり前のように彼の車に駆け込み
助手席に座るのに。
もうそんな当たり前は
どこにもなくてむしろ
気まずい関係しか築けなかった。
彼はいいよ。座ってって
優しく言ったの。
いつもはねすぐ助手席に乗ると
左手を開けてくれて
私の右手を握ってくれるの。
もう手さえ繋げなかった。
別れてるから当たり前なのに
その当たり前が受け入れられなかった。
私の右手は私の膝に置かれたまま。
淋しかった。
彼はお腹すいてる?
なんか食べにいこうと思って。
食べたいのある?
私はなんでもいいよ。
貴方の食べたいものでいいよ。
彼は笑いながら
出たよ、いつものパターン。
絶対なんでもいいって言うと思ったから
今日は新大久保に行って
韓国料理食べようと思うんだ。
新大久保行ったことなくてさ
行きたいと思ってたんだと彼は言う。
私はそっか。なら新大久保で。
私も初めて行くと言い
新大久保に向かうことになった。
行きの車のなかは
会話さえあるものの
やはりどこかよそよそしかった。
彼とは今の仕事場になってから
初めて会ったので
今の仕事形態や状況などを
話してるうちに新大久保についた。
夜の暗さと正反対の町の明るさは
車のなかから見ると眩しいぐらいだった。
車を駐輪場に止め
降りて町の中を歩いた。
彼は本当に物知りだから
大体道路のことやお店のことは
わかっていたようで
おんどる?おんどり?
だかなんだかの韓国料理屋さんに
行きたいといいすぐ道さえわかってしまい
あっという間にお店について
ご飯を食べることに。
彼は本当に全てが
スムーズなの。
