カザフスタン  | 新書野郎

カザフスタン 



カトリーヌ プジョル, Catherine Poujol, 宇山 智彦, 須田 将
カザフスタン

文庫クセジュということで原書は2000年。例によって、あとがきで訳者がそれ以降の事項をフォローしている。それによると、その後、カザフスタンは奇跡的な成長ベースに乗り、政治面もナザルバエフ長期政権が安泰なのだという。その辺りは前が酷かったり、周りが酷かったりということもあるのだろうが、アラファトがイスラーム世界初の核保有国を祝福したなんていう物騒な状態からは脱したことはたしかであろう。その意味ではこの国からイスラーム世界へ核が拡散したり、中央アジアに核ドミノ現象が起こる可能性があった訳で、とんでもない不良国家を隣国に抱える身にとっては、カザフスタンは南アフリカと並ぶ核優等生国家とも言える。ただし、著者が指摘している通り、単純な優等生的ふるまいとして核廃絶を宣言した訳ではなく、それがたまたま自国となった領土にあったというシロモノであった以上、それを維持、管理するという能力もコストも欠けていたというのが実情の様だ。南アの場合も、周囲に脅威の対象がなくなって、ドミノできる様な国も周辺にはないという現実が、核開発の意味を失わせてしまったのだが、そうなると、元々、成功したのかも失敗したのかも不明のあの国が狙ってるのは「核廃絶」というカードではないかという気もする。どうもリビアを参考にしているフシもあるが、将軍様も大佐殿の様に国際デビューする日が来るのだろうか。
★★