この時に八岐大蛇の尾から出てきたという天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)、のちに草薙剣(くさなぎのつるぎ)と呼ばれる剣は、今も名古屋の熱田神宮に祀られていて、
その写しが、令和のご大礼でもケースに入った状態で中身は見られませんでしたが、皇位継承の三種の神器のうちの一つで皇居にある事が知られています。
この八岐大蛇(やまたのおろち)退治ですが、世界にも似たような英雄神話・伝説があります。
インドだと軍神インドラが、水をせき止めて旱魃を起こして人々を苦しめた蛇型の日照りの悪魔・ヴリトラを倒し、人々を救った伝説があるようです。
武器は剣ではなく今も仏教用具にあります金剛杵(こんごうしょ)。
これでヴリトラの背骨を粉砕したとか。
物理的に考えると長いものに対して結構手間がかかりそうなので、これで雷を起こして大雨を降らせ日照りを解消したと解されているそうです。
それから私も遥か昔の少女時代に読んだり、大人になってからは西洋美術展でこれを題材にした絵画を複数点鑑賞したこともあるギリシャ神話、ペルセウスのアンドロメダ王女救出劇
エチオピアの王妃カシオペアが娘のアンドロメダは海の神の娘なんかよりずっと美しいと言ったため、怒りを買い、海の怪物に娘を捧げなければいけなくなった。
それを助けにきたのがペルセウス。
また、ゲルマン神話のジークフリート・北欧神話だとシグルズ
竜の血を浴びて不死身となるが、葉っぱが貼り付いて血が掛からなかった背中の一部が弱点となり死因になる。
あとはヘラクレスの9つの首を持つ大蛇ヒュドラ退治。
切ってもまた生えてくる首だったので、切り口を火で焼いて倒した。
他にゲオルグ(ジョージ)がドラゴンに襲われた王女を救出する話も聞いたことがある。
そんな訳で、小中学生頃の私は外国の英雄が王女を救出する時は、
まっとうに竜・ドラゴン・大蛇・怪物などと戦っているのに対し、
日本神話だと、まず大蛇に酒を呑ませて無抵抗にさせてから斬るので、
「なんか、ずるい」とガッカリしたものでした。
しかし、八岐大蛇は氾濫する川の象徴で、素戔嗚尊(すさのおのみこと)は、
出雲(今の島根県)で治水事業を行った事の象徴だと解する人もいます。
剣の発見は出雲の製鉄産業振興又は支配した事の象徴とか。
そんな訳で、力強い英雄が、いざという時に現れて悪者を退治し、
困っている弱い立場の人々を助けてくれる…という話は古今東西にあるので、
人類共通の願いの投影ではないかと考えています。