普段、神社にお参りというと拝殿の前でお賽銭箱にお賽銭を入れて参拝する事が多く、

お宮参りや七五三や結婚式、事業興隆祈願や必勝祈願、厄除けなど、神職に祈祷をしていただく時には拝殿の中に上がらせていただき、正式参拝(あるいは昇殿参拝とも言う)になると思います。

ですから、一般に参拝者がよく目にするのは、本殿の前にある拝殿の方だと思います。

 

↓大國魂神社 拝殿 

切妻造 千鳥破風 銅板葺き素木 明治18年改築・昭和53年・平成22年改修されました。

 

神社で最も神聖なところである本殿の御扉(みとびら)は、通常、閉じられています。

 

↓写真左 大國魂神社 本殿 

銅板葺 総朱漆塗り 東京都指定有形文化財 寛文7年(1667年)造営、

元は三棟三殿でしたが、この時より一棟三殿に改められました。

 

 

神社の原初形態からの発展 

 

また、奈良県の大神(おおみわ)神社のように背後の三輪山をご神体山としてお祀りしているので本殿が無い神社もあります。

これが神社の原初形態で、三輪山の一部は今も足を踏み入れてはならない禁足地になっています。

 

以前にも当ブログのどこかに書いた気がしますが、

古代の人々は、神様はいつも一つのところにいらっしゃるわけでなくお祭りなどの時にお呼びして来ていただくもので、その時に神様は山や木々岩などに宿られると考えられていました。

この神様が依りつかれるものを「依代(よりしろ)」と言い、

木の場合はご神木、神籬(ひもろぎ)

山の場合はご神体山、神奈備(かんなび)

岩の場合は磐座(いわくら)、磐境(いわさか)などと呼ばれています。

但し、ご神木と言った場合、これ以外にも神社にゆかりのある木、銘木、古木などを指すこともあります。

古(いにしえ)には、お祭りの時はそうした所に祭壇を設けて神様をお迎えし、終わると神様をお送りしました。

 

その祭壇が臨時の建物に変化します。

その建物はお祭りごとに終われば撤去されていましたが、(おそらく古墳時代・飛鳥時代くらいまでは社殿を設けた神社は少なかった)

やがていつも神様が鎮座される神社へと発展していったのです。

 

拝殿が無い神社 

 

伊勢神宮や春日大社などには拝殿がありませんが、これも太古に屋外で神様をお祀りしていた名残です。

また比較的大きい神社にはご本殿と拝殿の間に連続して建てられている建物があり、これを幣殿(へいでん)と言います。

神様に様々なものを奉り、祭祀の為の空間として使われているところです。

 

 

神社の屋根 

大きく分けて切妻造(きりつまづくり)と入母屋造(いりもやづくり)の二種類がある。

さらに本殿や拝殿の構成含めて仏教の影響を受ける以前の古代神社3様式と仏教以降の本殿様式6種くらいに分ける事も出来る。

 

切妻造の例 

 

切妻造の屋根の形状は一般的で↓大宮氷川神社内の宗像神社のように側面の方には屋根が下がってないタイプ。 屋根の上のV字のを千木(ちぎ)と言い、垂直に切られた形が外削ぎです。

氷川神社略記には社殿について「流造」と書いてありました。

流造は屋根が切妻造で、正面側の屋根が長く反りがついています。

こちらも流造ですが本殿もそのようです。

 

↓東京大神宮の屋根 赤線を引いた部分が棟です。

その上にいくつも置かれている短い腹の膨れた丸太状のが鰹木(かつおぎ)で、千木は水平に切る「内削ぎ」です。

最初、私はどういう建築様式なのかよく分かりませんでしたが、神宮の系列ですから神明系で、本殿の屋根の棟に並行して入り口がある平入りの本殿、そこに縦拝殿が一体化していると見ました。もし詳しくご存じの方がいらしたら間違いがあればコメントお願いします。屋根は切妻造。

 

 

入母屋造の例 

入母屋造は屋根が四方に延びている。

本殿様式が権現造や日吉(ひえ)造などが、入母屋造の屋根。

 

入母屋造の中でも独特で国宝本殿拝殿として名高いのが吉備津神社

建築学上『比翼入母屋造』と言うそうです。

 

それから湯島天満宮も入母屋造・権現造な感じがしますね。

航空写真で見ても社殿四方に屋根がありました。

↓2023年の梅まつり期間中に撮った湯島天満宮の拝殿側写真

湯島天神と梅

↓本殿の横(妻)側から撮った写真 妻側にも屋根がある感じ。千木が外削ぎで鰹木が載っています

湯島天神・横から

↓本殿裏から。やはり屋根が四方に出ているので入母屋造ですね。

 

本殿の建築様式は、座標軸作って分けたいですね。

入口の平入りー妻入り軸と屋根の切妻ー入母屋軸。

そうすると切妻エリアに偏りますけど。

 

【追記】

本殿の形式を仏教伝来以前と以降に分けた場合

古代神社3様式 

伝来以前の直線的な造りの本殿様式には神明造・大社造・住吉造があり、古代神社3様式とも呼ばれている。

 

神明造

 

平入り・切妻造 弥生時代の高床式の穀物倉庫を神を祀る建物として転用したもの。

横に棟持(むなも)ち柱が建つが柱はすべて掘立柱で屋根は茅ぶき。千木は内削ぎ。

大棟の上に十枝の鰹木を並べ置く。(内宮・外宮は9枝)

伊勢神宮の内宮・外宮の正殿は唯一神明造。

 

大社造

妻入り・切妻造 入口は中央でなく左右のどちらかに寄る。内部には中央に太い岩根御柱(うずの柱)があり、古来、この柱をご神体として認識していたとも言う。

また、この大社造りを二つ繋げた美保造もある。

出雲大社、神魂(かもす)神社、須佐神社など(島根県)

 

住吉造

妻入り・切妻造 天皇が即位後に神人共食する大嘗宮(だいじょうきゅう)の建築様式を受け継いだと言われる。内部に「室」と呼ばれる食事をするための部屋と神の空間である「堂」がある。

住吉大社(大阪府)ここは社殿の並び方が船団のようで独特です。公式サイトに国宝・住吉造本殿について詳しく説明されています。

 

 

仏教以降の本殿6様式 

 

 春日造

妻入り・切妻造 妻入りの正面入り口にひさしをつけて、外削ぎの千木と鰹木を屋根に載せている形式。春日大社(奈良県) 公式サイトの御本社(大宮)回廊内[1]御本殿の写真

 

 流造

平入り・切妻造 千木も鰹木も持たない…と『イチから知りたい!神道の本』にはあるが、実際は千木も鰹木もあって、正面側の屋根が長く、反りがついているのもある。

最も普遍的で全国に分布しているタイプの造り。

 

 八幡造

平入り・切妻造 本殿と奉祀の為の外殿と内殿が独立して前後に並び、その間を相(あい)の間で繋げている。二つで一つの本殿。

宇佐八幡宮(大分県)など

 

 浅間造

平入り・切妻造 富士山本宮浅間大社(静岡県)にみられる、二階建てで、二重楼閣造とも呼ばれる。下層部は寄棟造で上層に三間社流造を置く。屋根はともに桧皮葺。

 

 日吉造

平入り・入母屋造 日吉大社(滋賀県) 入母屋の屋根に側面に破風が入った形式。千木や鰹木なし。神仏習合の影響が強く残る。日吉造の特徴

入母屋造の背面をバッサリきり落とした形。正面中央にのみ扉を設けている。床下には神仏分離まで本地仏を安置していた「下殿」と呼ばれる部屋がある。

 

 権現造

平入り・入母屋造 拝殿と本殿を石の間で繋いだ形式。実在した人物の霊を神として祀る神社に多く見られる。 久能山や日光東照宮など。

久能山東照宮の国宝御社殿