これまでの素戔嗚尊の八岐大蛇の話から、
最後の一書、第六で大己貴神(大国主神等別名多数)の話が出てきましたが、
私も子供の頃、児童書や絵本で読んだり、最近ではマンガ古事記でも読んだ有名な因幡の白兎の話や、大己貴神が幾多の試練を越えて素戔嗚尊の娘と結ばれる話がない!と思いましたが、
皆さんはそこに気がつかれましたか?
あれは古事記の方ではあるけど、日本書紀のほうには無いそうです。
で、日本書紀では大己貴神は少彦名命と共に国づくりをし、
人間と畜類の為に病気療養方法と、
鳥獣・昆虫の災厄を除くまじないの方法も定めました。
これによって人々は今に至るまで「恩頼(みたまのふゆ)」
つまりは恩恵を受けていると書かれています。
この「恩頼」は正式参拝する時に神主さんが奏上している祝詞(のりと)でもよく使われる言葉で
御霊(みたま)が増えるの意とも、
御霊が振るうの意とも解釈されていますが、
いずれにしても神の恩徳の盛んなさまを表す語です。
それから、大己貴神の前に海を照らしながら光って現れた
「幸魂(さきみたま)・奇魂(くしみたま)」ですが、
「私はお前の幸魂(さきみたま)・奇魂(くしみたま)」と名乗ってましたね?
神道では、魂は複数あって自身であると考えているわけです。
この古くからある神霊観に基づくと、
他にも和魂(にぎみたま)と荒魂(あらみたま)の二つあって、
全部で四魂(しこん)と言います。
和魂は神霊の和やかな側面
幸魂は幸いをもたらす神霊のはたらき
奇魂は霊妙な力で万事を知ると言う神霊のはたらき
ちなみに、和魂(にぎみたま)の一部が幸魂(さきみたま)・奇魂(くしみたま)であると本居宣長は説いている。
荒魂は神霊の活発な側面。
という事から、八岐大蛇退治/宝剣出現章の一書、第六で大己貴神が海を照らしてやって来た自分の魂を迎える場面は、
荒魂の働きが強くなり過ぎたことによって、おごり高ぶった様子が表れたのに対し和魂の働きが、反省を促したものと解釈できるでしょう。
と、神話のおへそ日本書紀編テキストには書いてありました。
なんて言うか、私なりにリアルに近づけて空想すれば、
国づくりという土木工事・灌漑工事・稲作・害虫駆除・医療充実を成しえて、民にも称えられるようになって、少し尊大なところが出て来てしまった大国主命が、海を見ながら自問自答してたら、悟ったような感じですかね。
我々日本人のご先祖様がもっていた、古(いにしえ)の神霊観・霊魂観がお分かりいただけたでしょうか?
さらに直霊(なおひ)が自分の内側にいる神様で、
あわせて一霊四魂と言う説も聞いたことがあります。
それから埼玉県の「さいたま」の由来も「幸魂」からきているという説から、県内にある橋の名に幸魂大橋と名付けられた橋があります。