出張で飛行機や新幹線に毎週乗っていたので、お尻の汗疹が
年中治らなかった経験のあるビリ謙です。
私は3度の飯より映画が好きです。
皆さんは映画はお好きですか?
私はどんなジャンルでも観ますが、特に好きなのは
サスペンス映画。
ヒッチコック監督(サイコ、めまい、鳥)やデ・パルマ監督
(キャリー、アンタッチャブル)のドキドキするカメラワークを
真似て、大学時代は自主映画を撮ったりしたものです。
その時期、小倉のある映画館の支配人からお声がかかり、
大学で映画の前売券を売って欲しい・・・と依頼されました。
そして、ある映画のチケットを1月で120枚売った経験も。
その後、支配人は私をバイトで雇い入れ、映画館の運営を
ご教授されました。
ところで『業務試写』ってご存知ですか?
普通の試写会は、封切られる1ヶ月前後に一般人の口コミを
求めて行う試写会。
業務試写は、業界や興行会社の人が売り込み戦略のために
行う試写会のこと。
私はよく支配人に連れられて、新作映画を封切の3ヵ月~
半年前には観ていました。
当時はシネコン(複合映画館)がない時代。
東映・東宝・松竹・日活・その他名画座が、邦画と洋画部門に
分かれて、各々の映画館を運営していました。
支配人のご好意で、私は他の映画館も顔パスでしたから、
新作でも年間200本は観ていたと思います。
大好きな映画にどっぷり。
本当に至福の時代でした。
支配人は興行会社の役員を兼ねていて、私にとっては
大学時代の父とも呼ぶべき存在になっていました。
昔からの映画や興行に詳しく、話をしていても全く飽きず、
仕事には絶大な信用を置いてくれる。
そうです。
当時、支配人は後継者を探していたのです。
業務試写では、映画会社の方を紹介されては、名刺を
頂戴したものです。
就職活動が始まったころ、冗談めかして
『なべ君はうちに来てくれるんやろ?』と言いながら、
目の奥は本音であることがひしひしと伝わっていた。
正直、迷っていました。
好きな映画に関する仕事ができる。
けれど、興行よりは製作がいいな!
海外から映画を引いてくる仕事もいいな!
そんなとき、ある名画が封切られました。
私の尊敬していた映画評論家、淀川長治氏が当時
大絶賛していた作品。
イタリアの巨匠ルキノ・ビスコンティ監督の「家族の肖像」。
日曜日の朝から観にいきました。
広い客席には私と、中年のご婦人、初老のご夫婦。
たった4人でした。
やっぱり評論家が絶賛するような高尚な映画は、
日本では当たらないな~。
映画が始まる。
「家族の肖像」・・・
ある貴族の屋敷に美しい不良青年が入り込んだことで、
主人公の老男爵をはじめ、家族が崩壊してしまう話。
映画の登場人物は5~6人。
物語はほとんど屋敷の中で進行し、舞台劇を意識した
つくりだろう。
特に大事件も、ド派手な音楽もなく、淡々と・・・。
さすがに美的感覚の優れたビスコンティ監督の映画。
あたかも名画が動いているような色彩と様式美で、ため息の
出そうな画面が続きます・・・が
実は、私は途中から何度も睡魔に襲われました。
感想としては、見る年齢が若かったかな?
しかしこの後、私には大きな感動が待っていたのです。
来られていた、初老のご夫婦。
その日は普通の日曜日。
特に近くでお祭りがあった訳でもなく、なぜかお二人とも
着物をビシッと着こなしていました。
静かに名画を鑑賞され、静かに帰っていかれたのです。
私は素敵だなと思いました。
きっと、あのご夫婦も昔から映画が好きで、いい映画を
選択しては観に来られているのではないか?
いくつになっても、お二人で。
着物を着てこられたのは、たぶん心の贅沢のため。
本当に映画を愛している人は、こんな歳のとり方をするの
ではないだろうか?
自分もそうなりたい。
このとき、私は大好きな映画を仕事にするのは止めようと
決めたのです。
本当に映画が好きなら、ビジネスにすべきではない。
ビジネスである以上、収益を求められる。
であるなら『当たる映画がいい映画』『当たらない映画は
悪い映画』にならないだろうか?
どんなに素晴らしいモノでも、会社が倒産したら素晴らしいと
言えるのか?
そんな銭(ゼニ)金感覚で映画を観たくない。
あるとき、支配人が私にこう言った。
『なべ君が良いっていう映画は、当たらないね・・・』
当時の私は、比較的、高尚な映画が好きだった。
1本見たら、酒の肴に一晩中でも語り合えるような映画。
時間のたっぷりあった大学生活は、哲学していたかも?
とにかく、私は歳をとったら、あのご夫婦のように
好きな映画を選んで、心の贅沢を味わえる生活をしたい。
そこに、稼ぎとか、ビジネスは持ち込みたくない。
そう思いました。
仕事は、自分の好みばかり選べないのです。
たとえ好きなジャンルの業界であっても、その中には五万と
職種があります。
例えば、昔のヒットメーカーであった小室哲哉やつんくが
どんなに映画音楽をやりたくても、世間やプロダクションが
求めるなら、売れ線路線ばかり作らなければならない。
それは時に意に反すること。
しかし、ビジネスである以上、好き嫌いを言ってる場合では
ないはずです。
映画の監督をやりたい人が、大道具さんで終わってしまう
ことだって。
ビジネスは単に「好き」だけではやっていけない。
今考えても、学生時代によくもこんなことを考えられたと
我ながら感心するほど、鮮明に覚えています。
好きなことに「夢」を追うな!
と言っているのでは、決してありません。
もちろん嫌いな仕事は続けられませんが、ビジネスとして
食っていくのなら、もっとシビアにとらえるべきだと思って
いるだけです。
楽しいことばかり、好きなことばかり・・・なんて、仕事の
世界ではありえないからです。
今、就職活動されていらっしゃる方、仕事を模索中の方へ。
何か参考になることがありましたら・・・。










