日本酒好きの方なら、ピンときますよね。
とても簡単にまとめてしまうと、毎年春に行われている国主催の日本酒コンテストなんです。
この鑑評会の主な目的は、酒造技術の向上と、日本酒の認知度向上にあります。また、この鑑評会で上位になると、金賞という賞状を授与され、酒蔵の名誉にもなるわけです。
そんなわけで、全国の酒蔵の多くが、この金賞受賞を目指しているわけです(われわれはお客さんに喜んで飲んでいただくお酒を造ることに全力投球しているので、参加しませーん、っていう酒蔵ももちろんあります)。
この全国新酒鑑評会、車でいうところのF1レースによく例えられます。決められた制限・制約の中で、皆で上位目指して突っ走るわけです。確かにF1レースで勝利する車はものすごくハイスペックで高性能ですが、それが市販車として爆発的に売れるかというと、そんなことはありませんね。コストがかかるのでエライ値段は高くなるし、加速しすぎで、ブレーキも利きすぎ、おまけに一人乗り、とても乗用車としては使い難いでしょう(そもそも売っていませんが、手に入るとしても一部のマニアが選ぶだけですよね)。全国新酒鑑評会も確かにある規格において素晴らしいお酒がたくさん出品されるわけですが、それはF1的な素晴らしさに近いと思うのです。それが市販酒として爆発的に売れるかというと、やはり難しい面もあるかと思います。
さて、わたしは、全国新酒鑑評会は酒造技術の研鑽の場だと考えています。造ろうと思えば、どんなお酒だって造れます、っていう酒蔵の技術力のアピールの場でもあります。お客様の視点から見ると、それだけ高い技術力があるのだから、とても品質の良い日本酒を醸すことができる(あるいは醸している)という保証にもなりうるわけです。そんなわけで、全国新酒鑑評会で金賞を受賞するにはどうしたらよいか、前向きに考察してみたいと思います。
考察に当たっては、「平成23酒造年度全国新酒鑑評会出品酒の分析について」という報告を参照しています。これは酒類総合研究所が行っている全国新酒鑑評会の総括みたいなものです。
では早速、金賞受賞酒の成分値一覧表から見てみたいと思います。
札幌仙台 大阪 東京 全国
出品点数 174 111 35 876
金賞数 78 39 6 247
金賞受賞率(%) 44.8 35.1 17.1 28.2
アルコール分(%) 17.61 17.69 17.68 17.68
日本酒度 2.65 2.78 3.33 3.09
酸度 1.29 1.26 1.23 1.28
アミノ酸度 0.95 0.93 0.85 0.94
グルコース(g/100ml) 2.24 2.25 2.13 2.23
イソアミルアルコール(mg/l) 103.8 100 106.3 102.9
酢酸イソアミル(mg/l) 1.85 1.83 1.63 1.84
カプロン酸エチル(mg/l) 7.03 7.47 7.41 7.12
E/A比 1.78 1.84 1.53 1.78
とっても、見ずらくて申し訳ないですが、要約すると、まず、東北地区と大阪地区の酒蔵は金賞受賞の確率が全国平均に比べて高い、ということですね。これは日本酒好きの方なら、やはりピンときますよね。名醸蔵の多くがこの地域にありますからね。それから金賞を受賞したお酒の成分が、東北と大阪地区で似ている、ということです。金賞受賞の確率を上げたければ、これらの成分値に近づくようなお酒を醸せばよいわけです。
さて、わが東京地区を見てみましょう。同じ金賞受賞酒なのに、成分値がこれらの地区とだいぶ異なるものがあります。それは、日本酒度、グルコース、アミノ酸度、酢酸イソアミルの値です。これら値の違いを言葉で表現すると、甘やかな香り(バナナのような)、味の甘み・ふくらみが少ないということになります。金賞受賞しているんだから、いいじゃん、という考え方もできますが、金賞を受賞するお酒のトレンドから少し外れているわけです。そんなことも影響してか、東京地区の金賞受賞率は、全国的に見てもかなり低くなっています。ですから、まずはこのような成分値を持つお酒をいかにして醸すか、ということを研究する必要があるわけなんですね。
さて、今日はこれくらいにしておいて、次回はもう少し突っ込んで、新酒鑑評会で金賞を受賞したお酒の原料米、酵母、モロミについて考えてみます。