私ひとりで自宅に戻った翌日、車で実家に向かうこと約１時間。

私は焦って来たけれど、兄も母も意外にのんびりしていて、午後から病院に行きましょう、、、ということになりました。

お昼ごはんを食べてから、兄の運転する車で病院に向かいます。

車で１５分ぐらいのところの病院です。

病棟には２人ずつしか入れませんが、父と会うことができます。

私と母がまず病棟に行きました。兄は１階の待ち合い場で待ちます。

ナースステーションに声をかけて、来院者名簿に名前と体温を記入して、父の病室に入りました。

点滴で、腕の皮膚が青黒く変色しています。

意識が朦朧としているのがわかります。

父に声をかけました。

父の目が動きました。

しっかりと私の方を見ています。

分かっているんだ。父は、分かっている。

声をかけ続けました。

その度に父は大きな声を出してくれます。

こんな痩せてしまった体で、頑張って声を出しています。

しばらくして、兄と代わるために1階に降りました。

兄がエレベーターで上がると、すぐに降りてきました。

そして、私に向かって言いました。

「じいちゃんが急変した。急いで病室へ！」

私が病室を出たその直後、父の呼吸が急に静かになったそうです。

母が慌てて看護師さんを呼びましたが、もう、そのまま息を引き取っていきました。

私と兄が病室に入った時はバイタルは３０ぐらいで、呼吸音は聴こえません。

全員が揃ったのを見て、看護師さんが「そのまましばらく４人でお過ごし下さい。」と言って出て行きました。

(延命措置の希望はしていません。)

母と兄と私に見守れながら、静かに、父のバイタルは０になり、平らな一直線がモニターの中に流れて行きました。

家族4人の静かな時間が流れて行きます。

どれくらい経ってからだろうか、私たちが落ち着いたのを測ったかのようなタイミングで、お医者さんとお世話をしてくれていた看護師さんが病室に入ってきました。

静かに丁寧に父の心音と瞳孔を調べ、そして時計を見て、死亡を確認した時刻を告げられました。

看護師さんが泣いていて、仕事上、こんな場面は慣れているだろうけど、泣いてくれるんだ、、、と思って、また私まで泣いてしまいました。

その後、父の遺体をとてもきれいに拭いてくれ、入院前のような姿になりました。

お医者さんもその看護師さんも、霊安室から霊柩車に乗せる時も立ち会ってくれ、丁寧にお辞儀をして送り出してくれました。

そして、私たち３人はそのまま葬儀場に行き、これからの打ち合わせをしました。

コロナ禍ということもあり、家族葬に。

今夜は兄と母が父の傍らで泊まることになり、私はいったん自宅に戻ることにしました。

(まさか、今日こんなことになるとは思ってなかったので、着替えなどの用意がありません。)

夫と娘にこのことは伝えたけれど、息子にはどう伝えよう？

1番のじいちゃん子だったからなあ。

悩んでいたら、息子からラインが入りました。

「明日から食事が始まる。」

生きる命は回復が早い。

戻る命、逝く命。