resident evil

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好きな人がいる。
ざっくり説明すれば、同じ部活の、アイツ。そうそう、無口なアイツだよ。

何を隠そう、アイツは一言も話さない。ただいつも、にこにこと愛想の良い眉を下げた困ったような笑顔を浮かべている。誰もアイツの声を聞いたことなんてない。そう、俺でさえ。

我ながらアイツとは仲の良い方だとは思う。
中学の頃から、ずっと隣に居た。お陰様でアイツが何を言いたいかくらいは理解できるし、微細な表情の移り変わりも読める。最初は徐々にアイツの言葉にならない言葉を理解し始めた自分に驚いた。


なぁ、俺さ、お前の言葉が聞こえる気がするんだ。

アイツに初めてそう述べた時、自分でも不思議な感覚に陥った。声にならない他人の言葉を、本当に理解なんてしているのか。俺は分かったフリをしているだけではないのか。そもそも、こんなことを言われて、アイツは不快にならないのか。言葉にしないのなら、それは聞かれたくないアイツの中の「何か」では無かったのか。

様々なことが頭を駆け巡ったが、当のアイツはそんなに深くは考えなかったらしく、いつも通りの困ったように眉を下げた笑みを浮かべる。

嫌じゃないのか?

問いかければ、彼の目が、何かの言葉を訴えてくる。

…どうやら嫌ではないらしい。

俺より少し高い、誰よりも優しげな視線が、俺を捉える。
その屈託の無い笑顔に、少し気恥ずかしくなって視線を背けながら、

何か言いたいことがあれば、俺に言え。お前の声になる。

ぽつりと呟いた、掻き消えそうな俺の声に、こくりと頷くアイツ。
何処か嬉しそうだな、と感じたのは、俺の自惚れだろうか。


なぁ、お前、なんでアイツの言いたいことが分かるんだよ。

何度も同じ部活の奴らに聞かれたことがある。なんで一つの言葉も発しない、アイツの言葉が分かるんだよ、と。

何故と聞かれても。ある時以来、なんとなく理解出来るようになったとしか答えられない。


お前も言いたいことがあれば、きちんと話せよ。何が言いたいのか、声にしなきゃ、分からねぇよ。

そのまま、俺をすり抜けて、同じ奴がアイツに尋ねる。するとアイツはまたいつもの困ったような目を向けて、俺の顔を見てくる。

…いいじゃねぇか。俺が代わりに話してるんだから。

そのまま手をアイツの頭の上に乗せて、わしゃわしゃとその黒髪を撫でてやる。驚きつつも、柔らかく目を細めて見つめてくる彼の顔は、喜びに満ちている気がした。


どんな時も、俺がお前の声になる。
だから、お前は俺の目を見てくれればいい、その優しい黒い瞳で。

いつか、俺も、言葉にしなくてもアイツに伝わる日が来るだろうか。
お前と俺の間に、声という通信手段を挟まなくても、話し合える日が来るだろうか。


声にならない言葉を、視線で語りかける。

お前が好きだ、と。

例えアイツに、今、伝わらなくても。







僕の目で言葉を受け取ってしまう彼に、直接「言う」のが照れ臭い。
だから、僕は君の背中を見て、言葉を残す。

君の心の声も、きちんと伝わっているから。

…こんな僕と、一緒に居てくれて。僕の声になってくれてありがとう。


僕も、好きだよ。





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某バスケ漫画こがみと風。
一言も話さない無口な男の子とちょっとお喋りな普通の男の子の組み合わせが美味しかった。