我が県はとてものんびりしたところ。11年前にここに赴任して最初にびっくりしたのは、着任後事務にお願いしてもなかなかe-mailのアカウントを発行してもらえなかったこと(2週間ほどしてようやく)。これをはじめ、どこで時間がかかっているのかハタからは分らず、イライラしたことが多々あった。ただ、しばらくして慣れてくると、一度お願いしてからちょうど良いタイミングで二度目をお願いしてすぐにやってもらうなんていう、事務方とうまく付き合うコツも掴めてくる(笑)。

 事務方はそんな感じだが、もっとびっくりしたのは研究室に出入りする業者さんたちののんびり具合。物を注文して、それまでの感覚的にはそろそろ届くかな、と思うころ、その物が欠品していますが他社製品を探しますかどうしますか、と来る。呆れるというかなんというか。そのころはまだ業者間の競争もなく、それでも十分やっていけたのだろうが、研究業界に落ちる予算が減って景気が悪くなってくると、これまで出入りしていなかった業者が東京からやってくるようになり、・・そちらは東京で激しい競争に揉まれているから、いろいろちゃんとやってくれるわけ。当然、注文するのもそちらの業者が多くなり、地元業者との付き合いが減ってしまうことに(ラボの引越しでとてもお世話になったのに、申し訳なく思うことも)。

 要するに、我が県の人たちは皆呑気である、という一言で片付いてしまうわけだが、半島で人の出入りが少なく、気候も温和で、となると、そういう県民気質になるのは致し方ないことなのかもしれない。東京神奈川には負けるが、埼玉には勝っているという、中途半端な自信があるのがこの県の人たちで、大学も全く同じ状態。教員も学生もみなのんびり、でもプライドは高かったりする。そういう感じなので、大学が競争の真っ只中におかれていることになっているはずなのに、本学の多くの人たちはどこ吹く風。こんなので先行き大丈夫なのかと心配になってくる。

 ただ、真の学問って、鞭を常に入れ続けている状況からのみ生まれるものではないはず。もともとは、余裕のある人たちがあくせくせず自由に考えている中から優れた学問が生まれていたのです。すぐに成果を出すことを求めるのではなく、すぐではなくて良いからいつか成果を出してね、くらいの懐の深さをもって大学と付き合ってくれませんかね(笑)。腰を据えて研究をするのに適した風土、気質があるはずなのです、我が県には。