ノーベル賞のパロディーとして「人を笑わせ、考えさせる」独創的な研究に贈られる「イグ・ノーベル賞」に、わさびのツーンとした匂いで火災を知らせる警報装置を開発した滋賀医科大学などの研究グループが選ばれました。
「イグ・ノーベル賞」は、アメリカの科学雑誌が20年前からノーベル賞のパロディーとして始めたもので、人を笑わせ、考えさせる独創的な研究や開発に、毎年、贈られています。
ことしは、心理学など10の部門で賞が贈られ、29日、アメリカのハーバード大学で授賞式が行われました。
このうち「化学賞」には、わさびのツーンとした匂いで火災を知らせる警報装置を開発した滋賀医科大学の研究者や化学薬品メーカーの開発担当者など、日本人7人のグループが選ばれました。
研究グループでは、聴覚に障害がある人などが、特に寝ているとき火災警報器の音に気付きにくいことから、代わりに刺激のある匂いで目を覚ますことができないかと開発に取り組んだとしています。
滋賀医科大学の今井眞講師は、授賞式のスピーチで「この研究は実験に参加してくれた聴覚障害者の方々からの宝物です。
でも間違っても、寿司やそばには使わないでくださいね」と冗談を交えながら受賞の喜びを語っていました。
ことしのイグ・ノーベル賞は、このほか、車を運転中に長時間トイレを我慢したときの判断力への影響を調べた研究などが受賞しました。
今回受賞したわさびの匂いを使って火災を知らせる警報装置は、滋賀医科大学などが3年前に開発しました。
一般の火災警報器は警報音がけたたましく鳴りますが、耳の不自由な人やお年寄りの場合、寝ている時に音に気付かない恐れがあります。
このため、研究グループでは寝ている人を匂いで起こせるよう、嗅覚に働きかける警報装置を作れないかと考え、ツーンとした匂いがする「わさび」に注目しました。
そして、「わさび」から刺激の強い匂いの成分を取り出して缶の中に閉じこめ、火災の発生を感知すると霧状に吹き出す仕組みを考案しました。
滋賀医科大学で行われた実験では、耳の不自由な人を含む20代から40代の14人が眠っているところに警報装置を作動させたところ、風邪で鼻が詰まっていた男性を除く13人が、匂いが鼻に達してから2分以内に目を覚ましたということです。
なかでも、聴覚障害者の場合は、10秒から30秒後に目を覚まし、その効果が確かめられました。この警報装置はおととしから販売され、一部のろう学校などで導入されているということです
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