19歳の夏、アメリカを一人で横断した。

その為に１年間バイトして旅費を稼いだ。
当時の平均時給が450円という時代だから海外旅行は学生にとっては高嶺の花だった。

往復の航空運賃は、航空会社に勤務していた従姉妹に頼んで破格の値段で格安チケットを手配してもらう事が出来た。
今はなきアメリカの航空会社パンナムの訳ありチケットだった。
しかし格安とはいえ、航空運賃だけで貯金の半分近くが消滅した。

問題はアメリカに着いてからの国内移動費用だった。

いろいろ調べた結果、グレイハウンドという長距離バスの会社が、アメリパスという１ヵ月間乗り放題の周遊券を発売していることがわかった。

当時の値段で確か５万円ぐらいだったと思うが、それが最も安上がりな方法だった。
なにせ１ドル≒250円！の時代だ。
円高の今なら１万7000円で買えるチケットだ。

そのグレイハウンド周遊券とヒッチハイクで、約１ヵ月かけてロスアンジェルスから知人の住むボルティモアまで大陸を横断する計画を立てた。

学生の貧乏旅行である。宿泊費を浮かす為に、夜行バスを徹底的に活用した。
明け方にバスが到着した土地で１日を過ごし、夜遅くに東方面行きバスの最終便のどれかに適当に飛び乗って眠る。
一晩走って目が覚めたら新しい土地。その見知らぬ土地でまた１日を過ごす。
そんな繰り返しの毎日だった。

シャワーはグレイハウンドのパスディーポー(パスターミナル)の広い洗面所で体を拭き洗いだけしてしのぎ、数日に一度、街のホテルの宿泊客用プールにコッソリ忍び込んでは体を清めた。

そして食事はもっぱらハンバーガー。
グレイハウンドのターミナル内には必ずバーガーキングがあったので(業務提携？)、朝食は決まって毎日バーガーキングだった。
バーガーキングはご存知の通りのボリュームなので、朝喰えるだけ喰えば昼食は抜いても何とかなった。

夕食もハンバーガー。
ただし夕食はバーガーキングじゃなくって、街中にあるマクドナルドとかカールスＪｒというアメリカではメジャーなハンバーガーショップが中心だった。

そして夕食時には決まってアメリカの安い地ビールを、毎回その土地の銘柄を選んでは楽しんだ。

アメリカでは21歳以上でないと酒を売って貰えない。だから自分の生年月日をごまかした偽造ＩＤを作成してビールの購入時に使用した。

旅の途中、デンバーの吉野家１号店で酔っ払った白人にネイティブアメリカンと間違えられて喧嘩を売られ、一晩留置場で過ごしたり、移動中のバス内でレイプ事件が起こったり、宿泊していたYMCAの部屋に拳銃が撃ち込まれたり………

他にもまだまだ色んな事があった旅だったんだけれど、何故か食べ物の記憶は、ハンバーガーとケンタッキーとビーフボール(牛丼)ぐらいしか思い出せないんだよなぁ
(笑)

アメリカのマクドナルドでは、日本ではまだ販売していなかったクォーターパウンダーばかりを食べていた。
マクドナルドといえば個人的にはビッグマックの世代なのだが、アメリカのマクドナルドのビッグマックが何故だか不味いのだ。
全体的にぼやけた味でバンズもパサパサしていて明らかに日本のそれとは味が違う。
なのでアメリカではビッグマックの代わりにクォーターパウンダーを食べるようになった。

後になってわかった事だが日本とアメリカではマヨネーズの味が決定的に異なる。アメリカのスーパーのどこを探しても日本のキュー○ピーような味のマヨネーズは売っていない。
マヨネーズを使うビッグマックの味の違いは、そのあたりに理由があるのかもしれない。

ちなみに日本のマクドナルドは、バンズはフジパン、マヨネーズはケンコーマヨネーズという国内のメーカーが製造している。アメリカのマクドナルドとは味が違って当然である。
マクドナルドの味は世界共通ではないのだ。

この日ふらりと通りかかったマクドナルドの店先で、ビッグマック200円のポスターを見て思わず入ってしまった(笑)

ＬＬセット(コーラ、ポテト両方Ｌサイズ)をオーダーしたらオマケに写真のホルダーがついてきた。よく見るとこれはビッグマックじゃなくって、ダブルクォーターパウンダーチーズだね(笑)

何だか子供みたいに嬉しくなってしまってぶら下げて眺めていたら、遠い昔の旅の事を思い出してしまった次第でありました。

う～ん！
やはり日本のビッグマックは旨いなぁ!!

ハンバーガーと私