つまりは、こういうことなのだろう。

星野さんは、三宅君が好きだった。
三宅君があたしを好きなのを知り、あたしのことはあまりよく思っていなかった。
そんな折、あたしと中川さんが一緒にいるところを目撃した。
杏奈さん彼氏がいて良かった!しかも不倫!!
と思ったことだろう。
そしていつの間にか、三宅君との恋を実らせていたということ。

とても悔しくて、悲しかった。

でも。
よく考えてみると、あたしはきちんと三宅君を愛していたのだろうか。

不倫から抜け出したいがために、中川さんを忘れたいがために、三宅君を利用してはいなかったかと。

三宅君と付き合ってからの毎日は、本当に楽しくて幸せだったけど、それは三宅君が沢山愛情表現をしてくれたからで。

あたしは彼に何をしてあげられた?



とは言え、あたしは三宅君と星野さんが付き合っているという話はあまり信じていなかった。
星野さんが三宅君を好きなのは確実だけど、三宅君は二股をかけるような男ではない。

それは彼女としても、上司としても、自信を持って言い切れる。




【直帰するよー!杏奈終わりそう?札駅のスタバで待ってるね(^^)】

営業に出ていた三宅君からLINEが来る。
2人の時は上司と部下ではなく彼氏と彼女でいたくて、敬語は使わない約束だった。

【すぐ終わらせるね!】

あたしは、星野さんには負けない。