退院して一週間が過ぎ、初めての外来診察の為、
病院へ行かなくてはならない。
車を運転して行こうか、タクシーにしようか一人で悩んでいる。
妻はパートの仕事で休みが取れない。
「試しに運転席に座ってみるよ。」
車のキーを持って外に出る。
車のドアーを開け痛みに堪えながらそっと運転席に座る。
車のシートはうまく出来ている。下腹部があたらない。
心配そうに妻が出てきた。
「大丈夫なの、タクシーで行けば」
「ちょっと、試しにコンビニまで行ってくるよ」
エンジンをかけてサイドブレーキをはずした。
腹部にも、股下にも圧迫感が無い、これなら大丈夫そうだ、
病院へは車で行くことにしよう。
コンビニで缶コーヒーを買って帰ってきた。
車を駐車場に入れていると、
妻に「大丈夫だった」と、声を掛けられた。
ガッツポーズをすると、
笑顔で自転車に乗りパートの仕事に出かけていく妻の後姿を見送った。
その時には、多少長く運転していると、痛みが襲ってくることには気づかなかった。
膀胱替わりの袋は、ズボンと下着の間に琥珀色の液体を溜めていた。
袋の下には排泄用のコックが付いている。
コックの水滴のマークが見えるようにひねると、
勢いよく便器に液体が流れ落ちる。
その音は、膀胱にたまった尿が尿道を通して一気に押し出された時と、
同じような開放感のある音だが、
尿意を伴わない排泄行為が死ぬまで続くのかと思うと
寂寥感を漂わせる響音の何物でも無い。
フーとため息をつくと、
ペニスを振って尿切りをするのと同じように
袋のコックを振った。
その自分の動作に、
妙な哀しい、おかしさが込み上げてきた。
始めに
一回に数行ですが「小説不尿意」を不定期に投稿して行きます。
よろしくお付き合いください。ビッグ ガン
小説 不尿意 ビッグ ガン
尿意がある訳けではなかった。
腹部の両側に付いている袋の膨らみが気になった。
重い体をリクライニングチェアーから起こすとトイレに向かう。
寝ても座っても体を動かすたびに
陰嚢と下腹部の手術跡がじりじりと痛む。
私の緩慢な動作に、
「大丈夫」
妻が声を掛ける
「大丈夫だよ」
大丈夫さ、大丈夫だとも、心の奥から私を励ます声が聞こえる。