読書リスト(2)に「神はサイコロを振らない  大石英司」を追加しました。

10年前に忽然と消息を絶ったYS-11が羽田空港に着陸した。68人の乗客乗員は昔のままであった。彼らは戸惑いながら再会を喜ぶが、そこには過酷な運命が待ち構えていたのであった。

私は見ていませんでしたが、今年はじめに放送された同名のTVドラマの原作です。
「タイムスリップ」「奇蹟の生還」とSFっぽい設定ですが、主題は人の生き様を描いた感動を誘うものでした。

タイムスリップの原因については「量子力学にもとづいてマイクロブラックホールが…」と一応説明されているのですが、これには作者は重きをおかず特殊な状況を設定するための道具として登場させただけでした。SFも好きな私としては、もう少し読者に「なるほど」と思わせる説明が欲しかったところです。

肝心の人間模様ですが、多くの人物のエピソードを描こうとしすぎて全体的に希薄なイメージになってしまった点が残念でした。もう少し絞り込んで描きこんだほうが良かったような気がします。エピソードの中では「事件をきっかけに人気が出た女性チェリスト」「将来を嘱望されていた高校生テニスプレイヤー」などは好きなのですが…。