あの時から始まった僕の試練

時に1976年9月29日AM4時15分

「淳!」

「…ン?」

「淳とだから がんばれたよ」

「ありがと!」

「それとね この先の未来 ごめんね!」

「なに いってんねん!」

「これからも ずっと愛してるよ」

「私も わたしこそ 愛…」

最後まで言い切れずに、よしこが旅立った。



その後、葬式も法事もでることなく

まるで、夢遊病者のように

高校生活を…

いや、ただ息していただけかもしれない。



そして、一年が過ぎ去ろうとしたある日

深夜、ラジオから二人の大好きだったソウルが

君の声のように聴こえてきた。



翌日、君とよく和んだ、池の畔に自然に足が向いた。

その前になじみの売店で

「おばさん! 豚まんとこーら!」

「あら! 久しぶりだね!」

おばさんもボケたのか豚まんを二個。

「おばさん、豚まん一個だよ」

「ううん 一個はサービス」

「今日は、彼女にゆっくり食べさせてあげ!」

そう言えば、二人で一個を半分ずつ、

いやいや、あいつ、いつも一口だけで、我慢してくれてたな?

そやけど、売店のおばさんに愚痴ってたよな。

「おばさん! 彼ね! ほとんど食べるんだよ!」

そやから、おばさんに

「もう!あんたは!」って、叱れてたよな。



そんなことを想い出しながら池の畔に腰掛けた。

昨日聴いた曲が耳元に流れ、何かわかんないけど、

気持ちの中に湧いてきた。

そして

おばさんからもらった君の豚まん、

「おーい よっこ!」

君の分まで食べて、君の分まで生きるで!



翌週、ラジオに吹っ切れた想いを投稿。

ペンネームは

やさしい空

メロウスカイ

そして

欠かさず聴いていた

【マチのラブアンドソウル】

オンウェア

なにげに聴いていた。



すると

ラジオから

まさかの

投稿した内容が

聴こえてくる…



最後にはパーソナリティーから

「メロウスカイちゃん!」

「頑張ってね!」

「応援してるからね!」

「彼女の冥福を心からお祈り申し上げます」



パーソナリティーの後押しもあり

君の分身

詩人メロウスカイを携えて

その後の人生

生きて行くことを決意した。



その後

1982年に詩人メロウから卒業して

支えを得て、人生航海を出発。

ただ、支えを得ても、

飽くなきビジネスにチャレンジして波乱続き。

突進猛進タイプな意固地な性格。

絶壁に激突して、気絶も多々。

いつしか、支えも失い、前途多難な生き方。



再びメロウのお世話になり、軌道修正が2000年。

人生の道のりも、さほど障壁も少なく。

さぁ、そろそろ

プライベートも充実って時にも関わらず

また メロウの進言も上の空にして、

ビジネス一辺倒。



振り返れば、

パートナーが人一倍必要なくせに

どこか、

心の奥底では、

反抗していたんだろうか?



その矛先をビジネスに求めて…



ビジネス社会はある意味フィクション

そこには。人の心のよりどころや

人の人の人生の本質的な交わりは二の次。



そんな世界に過度に傾斜して

いったい何があるんだろう?



後の祭りとはいえ

あのときには

露ともわかっていなかった。



そして

天からのイエロカードを無視したために

レッドカードをかざされたのが

2009年2月

「誰か 救急車!」

仕事の出張先で意識をなくして突発に倒れ

救急病院に…


君は怒るかもしれないけど

意識のなかったとき

「君に逢える」

どこか解き放たれた気分で安堵した。



でもさ

まだまだ

修養が足りないんだろうね。



それはともかく

再びメロウに

「あんたね ええ加減にしいや!」

って言われ

今度ばっかりは

手綱をしっかり結んで

突進猛進は変わらないけど

ブレーキ機能を装備しなきゃって

大反省しました。



それからは

ブレーキ練習を猛特訓して

教習所第三段階を終えたのが

2010年10月。



その日以降は

メロウの力を借りることなく

歩んでいくことを決した。



そして

路上練習も頑張った甲斐があって

ようやく卒業試験が

2011年9月28日。



結果は

あの人たちが…?


「メロウ! どうあの人?」

「うーん?」

「透君 どう?」

「うーん?」

「ただ かあさんに向って生きることはなくなったような?」

「それに かあさんを想いだして 泣き言もなくなったかな?」

「ねぇ メロウ兄さん」

「うん!」

「そう!」

「なら 卒業にしましょうか?」

「あの人は もともと 動物好き 子供すき」

「あれこれ文句も多いけど 人好き」

「支えには 一途に向う人で」

「一途も 突進猛進だから」

「手がつけられなくて…」

「だから ブレーキ役が必要不可欠」

「あの人 ブレーキを自給自足といってるけど 事故の元」

「でも あの人が三度のご飯より大好きな 遥かなる愛」

「そのコトノハを 数多くの女流のひとから 支えられてるから 大丈夫かな…」

「かあさん! そうだね!」

「それに僕も 今でも 女流の方々に支えられてるよ」



「じゃ メロウ 卒業証書もっていってあげて」

「透君! もう少し 見張っててね!」

「はーい♪」







END



【想い出人生からの脱皮 ~ ショートストーリー『卒業』】

作/ メロウスカイ ~ 江彰 透 ~ bigi