リビングで一服していると、

となりの子供部屋からなにやら聞こえてくる。

「お兄ちゃん、教えて?」

「うーん なーに?」

小学校一年の娘が、今年高校に進学した息子に聞いてるみたいだ。

「1+1=なぜ2なの?」

「それはね・・・」

「指を1本だして、もう1本だしたら2本でしょ!?」

「うーん!? お兄ちゃん だから、どうして2本なの?」

「・・・!?」

「アァ! 美恵! お兄ちゃん約束あったから また後でね・・・」

どうやら一目散に退散するみたいだ。

「ママ! 美恵が勉強教えてって言ってるよ」

「ンモォー!!  お兄ちゃんが教えてあげたらいいのに」

「ちょっと 約束が・・・」

「美恵! なーに?」

キッチンからママがたまりかねて相手をするみたいだ。

「ママ! 1+1=なぜ2なの?」

「・・・!?」

「ママ、夕飯の支度があるから 後でね・・・」

「美恵! パパに教えてもらいなさい!」

愛娘の美恵がいそいそとやってくる。

「パパ!」

「ん? なーに?」

「お兄ちゃんもママもね」

「1+1=どうして2なのか教えてくれないの!?」

「1+1=2だよね」

「うん そうだよ」

「1+1=2ってね、なぜも、どうしても、わからないの」

「1+1=2ってね みんなでそう決めたの」

「だからね、どうしてって思わなくていいだよ」

「そうなんだ」

「美恵、いろんなこと、なぜ、どうしてって大切だけどね」

「説明できないことがいっぱいあって」

「そのことに、なぜ?は 意味がないんだよ」

「っていうより、なぜは考えないほうがいいんだよ」

「美恵は女の子でしょ」

「うん」

「なぜ? どうして? は思うけどね」

「そのさきは考えても 答えは見つからないから」

「わからないで、いいんだよ!」

「そこを、スタートにして、美恵の幸せに向かって」

「他のことを勉強していけばいいからね!」

「パパ!」

「わかることを勉強していけばいいんだね!」